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<行動中> 【先生】ちゃんとまったりおうちで映画…楽しみだね♪ ラブロマンス…いい響きだね。 その映画が好きなの?…【先生】ちゃんってやっぱり可愛いね。 <すれ違い> 映画の世界に入れたら素敵だと思わないかい? <ミステリー> 分からないことがあったら、【一人称】を頼ってほしい。 →【先生】ちゃんの悩む横顔…いいね♪ →【先生】ちゃんには謎が解けたのかい?すごいね。 →真剣に考える【先生】ちゃんの横顔が見れて、いい映画だったね。 -- (名無しさん) 2013-05-16 02 08 45 <ファンタジー> 【先生】ちゃんは魔法を使えるよね?【一人称】を虜にした魔法を…♪ →この弟子の魔法使い…失敗ばかりしているね。 →やっぱり自分の力量を見誤るのはよくないね。 →やっぱり最後は師匠が出てきて、杖のひと振りで元に戻すんだね。 <アクション> 迫り来る敵をかわし、【先生】ちゃんを守り…憧れるねえ♪ →そうか、彼の奥さんが人質の中に…。分かるよ、【一人称】も同じ立場なら【先生】ちゃんのために戦うよ! →ボスとの殴り合い…【先生】ちゃんが同じ目に遭わされたら、僕は許せない。 →ボスが倒された…やっぱり正義は勝たなくっちゃね♪ <ラブコメ> ふん、ラブコメね…【先生】ちゃんとならなんでも楽しみだよ♪ →泡風呂かぁ…【先生】ちゃんとならはいってみたいね♪ →かわいいね…感動しているの? →【先生】ちゃんになら、あんなふうに花束もって迎えに行くよ。 -- (名無しさん) 2013-05-17 01 09 29 <ラブコメ> ラブコメ…この2人のラブストーリーってことなのかな? →あんなリムジンに【先生】ちゃんと乗ってデートするのもいいね♪ →あの女優のドレス…きっと【先生】ちゃんの方が似合うよ… →【先生】ちゃんになら、もっと素敵な夢物語を見せてあげるよ… <ホラー> もっとくっついて見なくて大丈夫? →もしこんなことがあったら、【一人称】が絶対に【先生】ちゃんを守るよ。 →【一人称】なら、この身を挺して【先生】ちゃんを守るよ。 →いちいち反応する【先生】ちゃんの横顔…可愛かったなあ…。 -- (名無しさん) 2013-05-17 12 23 07 コメディ 笑いは、明るい生活のために必要だね。 →【一人称】が【先生】ちゃんをもっと笑わせてあげられればいいのになぁ。 →映画?ちゃんと見てるよ。笑ってる【先生】ちゃんを見ながらだけど。 →【先生】ちゃんの笑顔が見れるなら、何度でも見たい映画だね。 -- (名無しさん) 2013-05-17 13 37 01 ファンタジー ファンタジー…きっと【先生】ちゃんに似合いそうな綺麗な場所が出そうだ。 →魔法を使って誰もいない浜辺で【先生】ちゃんとデート…したいなあ… →あの弟子、心を入れ替えるといいけど…【先生】ちゃんはどう思う?【一人称】は無理な気がするんだ。 →あ~ぁ、【先生】ちゃんとの魔法の時間が終わっちゃったね…ねぇ、もう一回かかる気ない? -- (名無しさん) 2013-05-17 13 39 45 ファンタジーアクション 魔法学校か…【先生】ちゃんと2人でなら行ってみたいな♪ →【先生】ちゃんもこの学校に通ったの?そうじゃなきゃ、【一人称】の心を離さない魔法なんて使える訳がないよね? →主人公と敵にこんな因縁が…【一人称】と【先生】ちゃんの間の縁は良縁だけどね♪ →面白い映画だったんじゃないのかな?…続き?【先生】ちゃんが見るなら【一人称】も見るよ。 -- (名無しさん) 2013-05-17 13 42 51 男性店員一押し どんな内容になるのかな? →へ~こんな急展開は初めてだよ。クライマックスがどうなるのか…気になるね。 →……オーソドックスにまとめたね。ま、そこそこ面白かったかな? →ま、おすすめというだけはあったんじゃないかな? -- (名無しさん) 2013-05-17 13 48 21 <女性店員一押し> 確かにこの仮面は怪しいね…。怪人ってタイトルなだけはあるよ。 →1人の相手にどうしようもないほど狂ってしまう…その気持ち、分かるな…。 →目的のためには手段を選ばないのか…。テノール歌手まで手にかけるなんて…。 →あの指輪、わざわざ返しに来るなんてひどいよね。【一人称】がそんなことされたら泣いちゃうよ。 -- (名無しさん) 2013-05-17 13 51 31 <ファンタジーアクション> 指輪をめぐる戦い……【先生】ちゃんにあげたくなるようなすごい指輪の話なのかな? →このニンゲンはずいぶん耳が長いけど…えっ、ニンゲンじゃない?そうだよね、【先生】ちゃんの耳の形が【一人称】は好きだな♪ →ふう、やっと目的地に着いたんだね。 →これからも彼らの冒険は続くのか…。【先生】ちゃんと【一人称】の生活も、ずっと続くといいね♪ -- (名無しさん) 2013-05-17 13 58 05 <ファンタジーアクション> 7つのタマを集めると…何でも願い事が叶う?…へえ、夢のある話だな。 →あそこに4つ目のタマが…。願いを叶えるのは大変だねえ。 →こうやって他の人から力をもらわなくても…【先生】ちゃんのためなら【一人称】は無敵だよ♪ →…願い事が下着に…ダメだ、ツボにはまって…くくっ…。 -- (名無しさん) 2013-05-17 22 08 27 <女性店員一押し> ラブストーリーか…。【先生】ちゃんとそんなロマンティックな話を見れるなんて嬉しいよ♪ →愛のために狂う…いけないことだけど、俺には少し分かるな。 」 →好きな女性をさらって逃げる…分かるなあ…。 」 →【一人称】も【先生】ちゃんがキスしてくれれば、いろいろ救われるものがあるんだけどな…♪ 」 -- (名無しさん) 2013-05-17 22 10 26 <ミステリーホラー> ミステリーとホラーが同時に…怖かったら【一人称】に抱きついてくれていいんだよ。 →女の子を誘拐するなんて…何て酷い奴なんだ!! →行けっ!!父親なら娘を取り返せ!! →お父さんってニンゲンはとても強いんだね。【一人称】も【先生】ちゃんのためなら強くなれるよ。 -- (名無しさん) 2013-05-17 22 32 46 <ラブストーリー> 【先生】ちゃんと2人でラブストーリー…憧れてたんだよね~、こんな展開。 →【一人称】ならもっとストレートに、【先生】ちゃんにアピールするのになぁ。 →【先生】ちゃんが望むのなら、こんなロマンティックなこといくらでもしてあげる。 →ああいうロマンティックな恋を、【先生】ちゃんとしてみたいな…♪ -- (名無しさん) 2013-05-17 22 39 39 <男性店員一押し> 興味はもちろんあるよ!でもそれ以上に【先生】ちゃんと一緒なのが一番興味あることかな? →おおっ…こんな所から出てくるなんてね…びっくりだよ。 →見苦しいね。全くもって見苦しいよ… →罠のシーンはスリリングだったよね。 -- (名無しさん) 2013-05-19 01 41 12 ↑更新しました! -- (名無しさん) 2013-05-19 16 18 10 <ラブコメ> おや、次はラブコメか…恋愛の機微に関しては【一人称】の方がわかるのにね…♪ →リッチな男に憧れるの?【先生】ちゃんは【一人称】が傍にいるから間違わないよね♪ →……どんな理由にしろ女性を泣かすのは男としてはダメだと【先生】ちゃんは思わない? →ごめんね…あまりにも【先生】ちゃんの涙がきれいで見とれちゃったよ…♪ -- (名無しさん) 2013-05-19 20 07 03 <ホラー> 怖くなったら、好きなだけ【一人称】が手を握ってあげるよ。 →恐怖に怯える【先生】ちゃん…可愛いね♪ →現実でこんなことが起きたら怖いね、【先生】ちゃん ほら、きっと【一人称】が抱きしめてれば【先生】ちゃんも怖くなくなるよ! <アクション> 憧れるね、こういう絶体絶命な状況も。 →敵が近づいて…!…ふう、ドキドキするね…。 →早くしないとビルの爆発に巻き込まれるよ。【一人称】なら【先生】ちゃんを残しては死ねない。 →爆発シーン、怖くなかったかい? <女性店員一押し> オペラ座…【先生】ちゃんとそういうところにデートに行ってみるのもいいかもしれないね♪ →男なら、はっきりと潔く気持ちを伝えるべきだよね。 →いくら愛のためとは言え、間違った手段を取っちゃいけない。 →あの鏡の出口…どの鏡か分からなくならなかったのかな? -- (名無しさん) 2013-05-19 20 17 45 <女性店員一押し> 怪人か…俺にもこういう仮面は似合うかな? →俺はちゃんとストーキングとの区別はつけて行動してるよ! →ずいぶん思い切りシャンデリアを落としたね…。爆発までしてるよ…。 →もし俺が怪人でも、肥後介ちゃんをさらって逃げちゃうなあ。 -- (名無しさん) 2013-05-20 00 57 19 ◆◆◆↑更新↑◆◆◆ -- (名無しさん) 2013-05-21 21 10 14
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権現様の生れ所│和(陸中)│木部│ http //wakanmomomikan.yu-nagi.com/momomi3/maki-5265.htm
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Zせんこくげんしけん1 【投稿日 2006/03/12】 せんこくげんしけん 【2005年8月8日/19 45】 斑目は力なくアパートのドア開けた。一日の仕事を終え、外で適当に夕食を済ませて帰ってきた。上着をベッドに脱ぎ捨てて、イスにどっかりと腰を下ろし、フゥとため息をついた。 疲れる一日だった。仕事で、ではない。 いつも通りに現視研部室で昼食を取っていた時、大野がアメリカ人を連れてきたのだ。しかも2人も。しばらく自分一人での対応(というか流されるまま)だったので、午後のスタミナも奪われるような脱力感があった。 後でやってきた咲は、自分とは対照的に流暢な英会話で会話をしていたというのに。 斑目は虚空をうつろに見つめながら、「ケョロロ将軍ねえ……」とまた独り言。話題のアニメが気になるわけではない。彼女と自分との能力格差が、今頃になって心に小さな穴をつくっているのだ。 「あ~あ、かなわねーなァ!」イスの上で背伸びをした斑目は、1枚の封筒を手にしたが、中の「あの写真」を取り出すことはなかった。「眺めたところで、何が変わる……」 斑目は自分の気持ちを高ぶらせ、憂鬱な気分を珍しく速攻で振り払った。 「ええい、気を確かに持て。そんなことはどうでもよいではないか! 立てよ俺!」 12日からコミフェスが始まるのだ。しかも社会人になった今年は、額こそ少ないがボーナスも入った。これを同人誌につぎ込まないで何になる。斑目はギラギラした目つきでコミフェスのパンフレットに目を通しはじめた。 その中でひときわ目立つ告知は、同人誌の“業界”を席巻する大物「Hi」のもの。ここ2年ほど、801をメインに、大物作家を使って次々に流行を生み出すプロデューサー的な人物だ。「Hiは、今年は801だけか…」 その時、急にデスク上の携帯電話が小刻みに震えだす。ディスプレイを見て小首をかしげた。 「公衆電話…?」 電話に出ると、『斑目、斑目か?近藤だけど!』と、うろたえた様子の声が聞こえてきた。アニ研OBだ。 「あー近藤さん、久しぶり。どう?仕事の方は慣れた?」 『それどころじゃないんだ。サークルが変だ。OBの手には負えん……アニ研も“すでに押さえられた”。俺は明日大学事務に相談する』 「何の話?」 『気をつけろ……狙いは現視研の……』 (ガガッ!……ガチャ!!)「近藤さん?」 (ツー…、ツー…)その夜、再び電話がかかってくることはなかった。 【8月9日/11 30】 夏期休講中。直上からの日差しがコンクリートを焼き、日陰のコントラストをハッキリとさせている。ジワジワ、ジージーとセミの鳴き声は止むことがない。 人気の少ないサークル棟3階の現視研部室では、団扇を片手に語りあう笹原と荻上の姿があった。夏のコミフェスで大野が売り場に立てなくなったので、急きょ2人で会合を持つことにしたのだ。 笹原は、「今回の主役だから」とテーブルの一番奥に荻上を座らせ、自分はその右手に座った。 笹「まあ、ちょっとした動きの確認だけだからね」 荻「はあ」 笹「それにしても今年は猛暑だね。地球温暖化だね…ははは」 荻「そうでしょうね」 座る位置からちょっとした話まで、気を使っている笹原と、愛想の無い荻上の、たわいもない会話が続く。 そこに、「ここで良いから寝かせてくれぇ」とうめきながら、咲がやってきた。まだまだ自分の店の開店準備で忙しいらしく、目にクマを作って疲労困憊の様子。 が、笹原と荻上しかいないことに気付き、「あらあらー、2人で何やってんの?」と、笹原の向かい側に座ってさっそく茶々を入れる。 「打ち合わせです」と味も素っ気も無い荻上。咲はニヤニヤしっぱなしだ。 何かを期待している。荻上にはそれが嫌なほど感じられる。(先輩誤解してる)とは思う。しかし、(自分自身はどうなの?)(嬉しくはないの?)と自問するが、怖くて自分の心に素直になれなかった。 ガチャ、部室のドアが開いた。 「や~久しぶりだね」と、顔をのぞかせたのは、なんと“あの”原口だった。 「!?」あまりに意外な人物の登場に3人は言葉も無い。むしろ(コイツいまだに学内ウロウロしてるのか)とあきれて言葉も出ない。 笹原は先日、荻上の部屋での打ち合わせで、「結局あの人どこで何してっかわかんないし」と原口を評したばかりだった。 全ての人には見えない線が繋がっていて、想ったり噂したり、何かが起きた時に、その線を通じて相手に通じるという話を聞いたことがある。「虫の知らせ」なんかもその類いだという。笹原は、その話を思い起こして自分の発言を後悔した。 「……何か、用ですか?」と訪ねる笹原は無視して、原口はドア直近のイスにどっかり腰を下ろし、荻上に向けて言葉を発した。 「荻上さんだっけ? “あなたのとなりに”はもうミナミ印刷に入稿したんだっけ?」 荻上の表情が青ざめる。まだ笹原にも大野にも伝えていない自分の同人誌のタイトルではないか。「!?……なんでソレを知ってるんですかッ!?」と声を荒げる。 原口は、気にも留めず、「麦男×千尋というのは使い古されたパターンで新しさはないけれど、キミの画力で見せてるよねぇ。あれはね、しっかり宣伝すれば売れるよ」と続けた。 もう荻上は言葉が出ない、両肩はワナワナと震え、原口をにらみ据える瞳には涙がにじんできた。 (……誰にも見せてないのに……あの人にも決して見せないと……) (汚された!) ガタンッ!とイスを弾き飛ばすように立ち上げる荻上を、咲が支えるように押しとどめ、「アンタ、ちょっと無神経じゃねーの!」と原口に向けて口を尖らせた。 「ああ、ごめんごめん、あんまりいい出来だったんでね。もったいないよね。小さな印刷所で50程度の発行部数なんて、儲からないよ~」 傷つけられた人間への配慮はまったく感じられない。 原口は本題に入った。 「そこでね、僕のツテで、トッパンで1万5千部印刷させてあげるよ、ミナミ印刷発注分は僕が買い取るから心配いらないよ。それでもまだ利益を得られるんだからね」 笹原は驚いた。編集者を目指す上で印刷業界のことも少しは勉強している。トッパンといえば日写と並ぶ印刷業界最大手ではないか。しかも1万5千なんてベラボーな数字だ。大手で個人誌を大量印刷なんて前代未聞、いや不可能だ。 思わず、「……そんなこと、できるわけないじゃないスか。第一、荻上さん個人の趣味の本ですよ。売るために作るわけじゃない……」と、腹の底から絞り出すような低い声が漏れた。 「それは売り方を知らないからだよ。君はいつまでもオナニーだな」原口は切り捨てるように返し、「聞いたことないかなあ。2年前から同人業界で新しいムーブメントを作ってる“Hi”って。あれ、僕なんだよね」とサラリと言った。 「大物作家に2、3原稿上げてもらってるから、そこのメインに荻上さんのマンガを入れる。さっそく刷って、製本を行ってギリギリで出す。僕がプロモーションをかけるから売れるよ~」 荻上を売り出す気らしい。 笹原はいい加減腹が立ってきた「荻上さんのことを何も知らない癖に、何を言ってるんだ!」強い語気で迫った。 「知ってるよ。少なくとも3年前からね……荻上さんが何を書きたいか、キミより理解しているつもりなんだけどね」 原口は、自分のカバンから、古ぼけた一冊のノートと同人誌を取り出した。 「!!!」荻上は驚愕する。原口が持っているノートは、今、自分の手元にあるノートと全く同じ物……。 いや、ノート自体は市販品だから「同じ商品」かもしれないが、それと一緒に掲げられたのは、まだ印刷もされていないはずの、同人誌「あなたのとなりに」製本版ではないか。 荻上は、ふらふらと後ずさりし、気を失いそうになった。咲も立ち上がって背中を支える。笹原も無意識に立ち上がっていた。 原口は続ける、「ボクならキミをメジャーにしてあげられるんだよね荻上さん。プロになれる。儲かるよボクと組むと」 荻上は気力を振り絞り、「誰があなたみたいなオタクと!」と叫ぶ。 「出版社にもアタリは付けてるんだ。友達にキミの腕前なら買ってもいいっていう編集者も居てねぇ。現役大学生作家として大いに売り出そうよ」 「嫌!」荻上は涙をポロポロと流しながら叫ぶ、もう立っているのもやっとだ。 笹原は、普段の彼からは想像もできない刺すような視線を向けて、「原口さん……帰ってください」とだけ呟いた。咲も怒り心頭の表情を向ける。 席を立つ原口、「仕方が無いなあ。もちろん学生の間は、現視研の活動扱いにして利益を還元してくれれば、学内サークルも大いに助かるんだよ?」 「だからッ……」原口は叫びそうになる笹原の発言を押しとどめ、フゥとため息を付いて目を細める。 「残念だけど、ゴネるようなら君たちは“解散”…だ」 ドンッ!とドアが乱暴に開き、見知らぬ男達が部室に入ってきた。3人、黒塗りのマスクをかぶっている。 咲「はい? マスク? 何コレ?」 原口は部室占拠の暴挙に出た。「サークル自治会といくつかのサークルは、ボクの提案に賛成してくれてね」と語る。 マスクマンは助っ人だ。「あんまりゴネるとこちらのプロレス同好会の皆さんが黙っちゃいないけど?」と強気に出た。 異様な緊迫感が部屋を包むなか、ガチャ! とドアが開いた。 「イルチェーンコ!シェフチェーンコォォォォォオ!ヘローヘロォ!」と体いっぱいに己の精神性を表現しながら朽木が現れた。 部屋中の誰もが、マスクマンの皆様も、朽木の狂態に顔中に汗をしたたらせて耐えた。 「アレ……ドシタの皆さん? おおっ、スーパーストロングマシン(マスクの人)が3人も!」朽木は状況が飲み込めないまま一人で盛り上がり始めた。 この隙をついて、咲は荻上の手を取り、腰を低くして男達の前をすり抜けた。「ササヤン!」と叫ぶ咲の声に反応して、笹原も駆け出す。しかし咲に連れられた荻上は足がもつれ、原口に肩を掴まれた。 「!」咲は荻上の手を離してしまう。 ドアから出かかった笹原が手を伸ばす。荻上も思わず手を伸ばす。 「荻上さん!」「ささは……ッ!」 しかし、視界にガタイの大きなストロングマシンが横切り、二人の手は振払われた。 笹原の片手は咲に引かれて部室の外に、訳も分からずその場の勢いで走る朽木を先頭に、咲、笹原は部室を飛び出した。 騒ぎが収まった部室を、サークル自治会長の木村が訪れた。左手が不安げにTシャツの端をいじっている。 「こ、これで良かったんですかね」という木村に、原口は、「みんなの利益のためだからね~、一部の人には我慢してもらわなくちゃね」とにこやかに笑った。 「じゃあ、今日からここは、“新現視研”ということで。あ、木村君、アニ研から沢崎君呼んできてよ。彼にここを任せるから」 どんどん話を進める原口の傍らで、荻上は抜け殻のように放心状態で座っていた。男達が騒がしく右往左往する中で、彼女だけ時間が止まったように動かない。ただ涙だけがスルスルとその頬を伝って落ちた。 視線の先には、まだ製本されているはずのない「あなたのとなりに」が1冊、無造作に置かれていた。 【8月9日/12 05】 昼休み。斑目はいつものように部室に向かう。しかし今日は、前夜の電話が気掛かりで、誰かが部室に出てくるのを期待していた。 サークル棟に向かう道すがら、別の門から学内に入ってきた恵子とバッタリ出くわした。 「あ、君もこれから部室デスカ」 「悪い?」 斑目は、(コイツじゃ事情は分かんないよなあ)とうなだれながら再び歩き始める。恵子は斑目の少し後ろを歩き、携帯をいじったり、無意識に斑目の手に揺られているコンビニ袋に視線を落としている。 別に語ることもなく、2人がサークル棟の階段を上り始めた時、恵子が沈黙を破った。 「あのさー」 「はい?」 「本っ当にこのサークルって合宿する気ないの?」 斑目は、階段を登る歩みを休めることなく、「この前も言った通り、我々にとって夏といえばコミフェスですよ。合宿にまわす金などない。あと……俺OBだよ。決定権ないし」と、素っ気なく答えた。 「第一、キミは他にも夏にアチラコチラへ連れてってくれるイカツイお友達くらい沢山いるでしょうに!」 ちょうど踊り場にさしかかった時に、寂しげな口調で答えが返って来た。 「ココの面子だから、いいんじゃん……」 斑目は立ち止まり、ハタと恵子を見て(あ、俺また無神経なこと言っちまったよ……)と自分の舌禍を後悔した。 恵子は慌てて、「あー、ホラッ、何はなくともコーサカさんいるし……」と取り繕ったが、すぐに、「……まあ、最近は何つうか居心地がいいんだよね。みんないい奴ばっかりだし。キモイのもいるけどね……」と本音が出た。 (素直なんだな)斑目は少しばかり恵子を見直し、「ああ、俺もだな。居心地いいのは同感だ」と、自分の気持ちを吐露した。 「だから就職しても寄生してるんだ」 「キミウルサイ」 階段を上り切って3階の廊下に出た時、斑目の背後でヴヴヴッという振動音が聞こえ、恵子が携帯を取り出した。 「あ、ねーさんだ」との言葉にピクッと反応する斑目だが、部室の近くで3、4人の男がざわついているの見て立ち止まった。 直後、恵子が斑目の半袖ワイシャツの端をクイッと引っ張った。 「何か、ヤバいみたいよ……ねーさんが部室に近寄るなって」 「もう、遅いんじゃないかなァ?」 すでに斑目の前には、久しぶりに目にする“嫌な男”が歩み寄っていた。 【8月9日/12 20】 「新現視研!?」部室前の廊下で原口の話を聞いた斑目は、耳を疑った。 「同人誌の件、荻上さん自身は納得してるんですか?」「ほかの現視研メンバーの同意は?」との質問にも原口は、のらりくらりと答えるばかり。鈍い斑目でも、昨晩の近藤の電話はこの件だったのかと推測した。 原口からは、「まあ斑目も、いつまでもこんな所をウロウロしていないで、仕事に戻ったらどうだ」と、痛いところを突かれた。(あんたも社会人じゃねーのか?)と心の中で突っ込みつつ、斑目はいつも通りの低姿勢で穏便にやり過ごそうと話をしていた。 納得いかないのは恵子だ。 「斑目サン、誰よこのデヴ!」 原口は細い目をさらに細めて恵子にらみ付けてから、斑目に向き直り、「何だ、この躾のなってないコギャルは?」と問いただす。 「笹原の妹デスよ……」 恵子は収まらない。「斑目もこんなのに敬語使う必要ないんだよ。ふざけんな“せっかくの居場所”をかき回すんじゃねーよ!」と噛みつく。 「居場所?」原口が反論する「この現視研は君らがタムロするための場所じゃないんだ。もっと有効に“活用”するために整理させてもらったんだよ」 部室のドアが開き、斑目にとって見覚えのある顔が出てきた。沢崎“新会長”だ。 驚く斑目に沢崎は、「今日のところはお引き取りください。あなた達学外の人間にとやかく言われる筋合いはないんです」と話に割って入り、「原口さん、ちょっと……」と呼んだ。 斑目は、原口の「さ、帰ってくれ」の言葉に黙ってうなずき、「ハイハイ、分かりましたよ……」と言いかけて、沢崎が空けたドアの向こう、部室のテーブルの一角に、無表情で座っている荻上の姿を見た。 荻上も、ハッと隙間から覗く斑目に気付き、2人の視線が交錯した瞬間、ドアは堅く閉ざされた。 斑目は険しい顔つきで、ドアの向こうをにらむ恵子の腕を取り、来た道を引き返しはじめた。 (今日の午後は代休になっちまうな)と斑目は思った。恵子の携帯に入ったメールには『学内にいる現視研は稲荷前に集合セヨ』とあったのだ。 部室内で沢崎は、部室の鍵を取り返す必要があるのではないかと原口に尋ねた。 「今日来ていた誰かが持っているかも知れないな。捜させよう」こうして原口の息のかかったサークルが、大学内で現視研を追いつめるべく動き出した。 【8月9日/13 00】 椎応大学の主な出入り口は、サークル棟に一番近い東端のテラス門、近所の動物公園につながる北門、そして南側の正門、西門の4カ所がある。 原口・沢崎による新現視研と一部サークルは、現視研メンバーの脱出を許さない構えだ。同調するサークルの人間が、普通の素振りをしながら見張りに立っていた。 しかし、その「見張り」が問題だった。 みんなプロレス同好会謹製の「スーパーストロングマシン」マスクを着用しているのだ。しかも緑色、量産型だ。実に分かりやすい。 椎応大学内には、緑豊かな茂みの中に、稲荷の小さなほこらが建てられている。咲、笹原、朽木はそこへと逃れていたが、話題は“追っ手”の容姿に及んでいた。 咲「あいつら、本当に馬鹿なんじゃないの?」 朽木「いやいや、悪の組織に量産型戦闘員は不可欠でありマス!」と朽木が目を輝かせる。 咲「悪ってオイ……」 朽木は、「あの人もなんだかんだ言ってオタクですなぁ……」と、原口を評した。 「ではさっき部室にいた黒いマスクは“三連星”ってことデスカ!ウヒョー!誰が踏み台になるんですかねぇ!」 話がドンドン暴走していく朽木は無視して、笹原は、「荻上さんを助けないと」と歯ぎしりした。 その後ろで朽木は、ガサガサとカバンから何かを取り出しはじめた。 咲「アンタこんな非常時に何遊んでんのよ」 朽「イヤイヤ誤解はナッスィングですよー」 朽木が持っていたのはトランシーバーだ。運動関係サークルが常用する無線の周波数はすでに知っているというのだ。 「うちの大学はよく駅伝出てるデショ。この回線を知ってると、連絡内容が聞こえたりして面白いんですヨ」 驚かされる咲、というかあきれていた。(コイツ盗聴まで……) 笹原「なるほど、相手も大人数だから携帯じゃ連携とりずらいし。無線を使いそうだよね」 咲「でもクッチー。あんたいつもそれ持ち歩いてんの?」 朽木は都合の悪そうな質問はスルーしつつ、鼻歌を歌いながら通信を傍受した。 「それほど人数はないみたいですな。サークル棟自体は見張りが少ないですニョ」 「そう…」咲はフーとため息をつくと、「あいつら何とかギャフンと言わせて、荻上取り戻さなきゃね」と呟き、笹原は無言でうなづいた。朽木はまた鼻歌を歌っていた。 予告編 ※BGM:ガクト(嘘) (カミーユ調で)「ハラグーロ!! 貴様はオタクの浪費の源を生むだけだ!!」 邪道SSの正統なる続編、望まれもしないのに登場!! “新現視研”に囚われた荻上奪還作戦が始まる!! 「Zせんこくげんしけん/オタの鼓動は萌」
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彼女がいつも目覚めるのは、部屋の中に日光が差し込んでからだった。 暗い眠りの中に落ちていた意識が、物理的に引っ張り上げられる感覚。 未だ惰眠を貪りたいという欲求を黙殺し、ゆっくりと布団から身を起こす。 少し冷える。 暖かな寝床が恋しいが、きっぱりと未練を断ち切らねばならない。 ―――お兄さんの言う所によると、どうやら自分は"てーけつあつ"らしい。 そんな事をぼんやりと考えながら、服を着替える。 薄いピンク、人参のプリントがされたパジャマを脱ぎ、一張羅に袖を通す。 今日は、思ったより寒い。 ブレザーも着込んだ方が良いだろう。 脱いだパジャマを畳んでから、両手に抱え持つ。 ちょいちょいと布団の乱れを直してから、彼女は自分の部屋を出た。 たん、とん、たん……と、規則的なリズムで階段を下りる。 この家は2階――正確に言えば屋根裏を含めて三階建てなのだが、彼女の部屋は二階にあった。 リビングに行く前に洗面所へと向かう。 洗濯籠の中にパジャマを入れてから、補助用の台に乗り、化粧鏡の前に立った。 ―――よし。大丈夫。 ちょいちょいと髪に手を伸ばしながら確認した。 変な所は見受けられない。 薄桃色にも見える、銀糸を束ねたような髪は彼女にとっての自慢だった。 毎日の手入れは欠かさず、一本の枝毛も無い。 台を軽く蹴って、着地する。 彼女には歯磨きも、洗顔も必要なかった。 「おっ、おはよう。今日は良い天気だぞ」 リビングのドアを開けた彼女を出迎えたのは、忙しなく動き回る男の姿だった。 彼はこの家の持ち主であり、彼女にとっての"お兄さん"である。 この光景は特に珍しいことではない。 彼女が起きる頃にお兄さんは会社へと向かうからだ。 「朝ご飯はいつも通り置いておいたから、ちゃんと食えよ? あと昼ご飯は人参スティックでよかったな?冷蔵庫に2本分切ったの入れてあるから」 ネクタイを締めながらてきぱきと指示を下していくお兄さん。 一言一句聞き逃すまいと、両手をぐっと構えてこくこくと頷く彼女。 「よし、それじゃあ俺もう行くわ」 玄関へと向かうお兄さんについて行く。 見送りは彼女の、毎朝の日課だった。 ……それに、やって欲しい事もある。 ぐっと、彼女は背伸びをする。 頭をお兄さんへと突き出す。 彼もまた、この行為の意味を知っている。 やれやれとばかりに苦笑すると、ぽんと彼女の頭に手を置いた。 「ちゃんと良い子で留守番するんだぞ?」 そのままゆっくりと、頭を撫でるお兄さん。 暖かな温もりが伝わってくる。 彼女の耳はふにゃりと垂れ下がり、四肢の力が僅かに抜ける。 自分から彼の手にすり付くように動き、目を細めて全身で「気持ち良い」と表現していた。 「……ま、こんなもんだろ。ほら、もう終わり」 ぱっと、手が頭から離れた。 途端にしゅんとうな垂れる彼女。 そんなに名残惜しいのだろうか、とお兄さんは思う。 しかし彼自身も悪い気はしない。 扉を開ける。そろそろ時間だった。 「それじゃ、うどんげ。行ってきます」 最後にそう言って、お兄さんは家を出る。 名を呼ばれた彼女―――ゆっくりうどんげは、大きく手を振って応えた。 ―――いってらっしゃい、お兄さん。 うどんげの一日が、始まる。 うどんげを怖い目に遭わせてみた ゆっくりうどんげ。 主に竹林を住居として好む、所謂『希少種』に分類される銀の髪に兎の耳を持った珍しいゆっくり。 れみりゃ、ふらん等と同様に、大多数の個体が胴付きであるという特徴を持つ。 性格は基本的に臆病。これは兎の因子が混じっている為という説が有力である。 彼女もまた、そんなゆっくりうどんげ種の中の一体だった。 紆余曲折――話の大筋には全く関係ないので省略――を経て、現在の飼い主、つまり「お兄さん」と同居する身である。 この話はそんな彼女のとある一日を描写したものに過ぎない。 はっきり言えば、山も落ちも意味も無いものだ。 嫌ならブラウザの「戻る」ボタンを押すことを強く薦める。 以上を了承された方のみ、以下の本編をご覧頂こう。 それでは始まり。 *** お兄さんを見送った後。 うどんげは、一人で食卓の前に座っていた。 右手には箸。左手には茶碗。 人間よろしく器用に手先を使えることが、うどんげの微かな自慢でもある。 白米をゆっくりと咀嚼してから、汁物椀を手に取り、口をつける。 薫る味噌の匂いは、それだけで食欲をそそった。 朝食が簡素に済ますことはお兄さんの趣味である。おかずは主采、副菜合わせて二品。 鰆の塩焼き。この時期は脂が乗って旨い。 人参の漬物。お兄さんが手ずから漬けて、味が出ているだろう。 迷い箸は行儀が悪いが、なに、誰も見ていない。 己の優柔不断さを遺憾なく発揮できることも、うどんげには幸せだった。 ゆっくりは基本、大食漢である。 例に漏れず、うどんげも健啖家だった。 炊飯器にご飯の残りがあったため、お代わりをする。 ―――ご馳走様でした。 全て綺麗に平らげ、合掌した。 食器を片づけ、台所に持っていく。 蛇口から水を出し、軽く洗う。 ここから先はお兄さんの仕事だった。 うどんげもゆっくりである。 通常のゆっくりに比べ多少の耐性は持っているが、それでも水には弱い。 水仕事はゆっくりにとって大変危険なのだ。 ……それでもうどんげは、自分の分くらい洗いたいと思っているのだが。 それを許してくれないのは、ささやかな不満だった。 時計は9時の少し前を指している。 ゆっくりと食事を楽しんでいると、このくらいの時間になってしまうのだ。 ―――よし。 ふっと気合を入れるうどんげ。 お兄さんは言ったのだ。「良い子で留守番しろ」と。 それは寝床に戻り、惰眠を貪って良いという意味では決してない。 お兄さんの言いつけを守る為。 そして何より褒められたいが為。 先ず第一に取るべき行動は――― ―――何、しよう? 行動は……行動は、特に無かった。 うどんげに出来る家事はそれ程多くない。 今すぐに思いつく仕事――つまり洗い物は、禁止されていた。 有体に言うなら、暇そのものだった。 暇ならば外に遊びに出かければいいではないか、と思うかもしれない。 だがうどんげは、それを思いつく事すらしなかった。 彼女は臆病な性格である。何処に行くにもお兄さんの後をついて回っていた。 加えて、この街にはまだ野良ゆっくりが多く生息している。 うどんげ自身、野良ゆっくりに襲われる飼いゆっくりを見たことがあった。 たった一人で外を歩き回るなんて事は、最初から視野にも入れていない。 とりあえずテレビの電源を点けるうどんげ。 チャンネルを回すが、ニュース、ニュース、よく分からない番組、ニュース…… 興味を惹くものは無い。 本格的に困った。 何もやることが無いのだ。 何かしらお兄さんの役に立ちたいうどんげにとって、これは非常に良からぬ事態といえる。 きょろきょろと周囲を窺い、何か無いかと思案する。 台所に行った。 冷蔵庫を開け、昼食の人参スティックがラップに包まれ皿に置かれているのを確認する。 これはうどんげの大好物だった。 まだ食べるつもりは無いが、卓上に出しておく。 洗面所に行った。 洗濯機が目に入る。が、これも駄目だ。 洗い物と同様にお兄さんに禁止されている。 隣接した風呂場に目を向ける。風呂掃除……も駄目だろう。 うどんげは大抵の場合、ドライシャンプーを使っていた。 シャワーを使ったことも数える程度しかない。 二階へと上がり、自分の部屋の隣、お兄さんの部屋を覗く。 質素な部屋だ。 布団の他には最低限の家具しか置いていない。 他に目につくものと言えば、クローゼット程度か。 勝手に入るのも悪いので、早々に立ち去った。 家の中を探し回る。 何か、自分に出来る事は無いだろうか。 ゆっくりの身でも出来る、そう難しくないお仕事。 実際にはそんなもの、なかなか存在しない。 ある意味これも暇つぶしにはなっているのかもしれない。 一階に戻り、リビングの隣にある和室でうどんげは休憩する。 少々疲れてしまった。 溜息と共にふと視線を投げかけると、 ―――あ、あった。 どうやらうどんげは、漸く自分の仕事を見つけたようだった。 *** ―――襟元、中央、最下段のボタンをとめて、袖を広げて置く。 箸を使えるうどんげである。 少々てこずったが、出来ないという事は無かった。 ゆっくり丁寧にボタンをとめていく。 ―――両腕をたたんで、二つ折りに。 うどんげの身長と比較するに、人間のそれは非常に大きいと言える。 自然、身に纏うものもそれなりの大きさだ。 彼女が扱うには少々難しい。 それでも手を抜くような事はしない。 教えられた通りにしっかりと畳んでいく。 うどんげは今、「服を畳む」という作業に従事していた。 和室から繋がる縁側には庭があり、そこには物干し竿が吊られている。 この家では、取り込まれた洗濯物は和室に置かれ畳まれていた。 そして畳むことを忘れていたか、時間が無かったのだろう。積まれていた大量の洗濯物。 過去にうどんげはお兄さんの手伝いをして、一通りのやり方を教えてもらっている。 と来れば、今この光景は当然のものと言えるだろう。 人間の児童程度の四肢を持つうどんげだ、ある程度集中すればそう難しい事ではなかった。 家の中に一人という現状も相まって、うどんげは作業に没頭する。 4~5枚程度を畳んでから、箪笥の中にしまう。 その繰り返しだ。 服を畳んで、隣に置く。 服を畳んで、その上に置く。 服を畳んで、その上に置く。 「……ゆっ!………なか……………だね!……こを………の……にす………」 服を畳んで、その上に置く。 立ち上がる。畳んだ服を抱える。 箪笥を開き、服をしまい、閉める。 元の場所に戻り、座って作業を再開する。 「ゆっ……………さす…………さのれいむな………こん……いおうち………けるなん…………」 先程の作業を繰り返す。 畳んで、置く。 ある程度溜まったら、箪笥の中にしまう。 「おきゃ………こんにゃ………いりゅよ………しゃいっしゃい……………にぇ!」 「れいみゅ………きょわ……………ぷきゅー………っきゅり………しゃしぇろ~!」 ひたすら同じ作業の連続である。 没頭しきったうどんげには、何も聞こえていない。 こういう所はゆっくりだった。 間が抜けている、と言える。 服を全て畳むのに費やした時間は10分ほど。 最後のひとつをしまい込んでから、うどんげはぐっと背伸びをした。 時間にすればほんの僅かだが、身体に疲れが溜まるには充分だったようだ。 こった体がほぐれていく。 ―――さてと。これからどうしよう。 洗濯物は終わった。 きっとお兄さんに褒めてもらえる。 だが、うどんげはまだ満足していなかった。 もっと仕事をすれば、もっと褒めてくれるに違いない。 再び仕事を探すことにしたうどんげ。 そのまま振り返って――― 「いい゛がげんに゛れ゛い゛む゛をお゛うぢのな゛がにい゛れ゛ろおお゛おおお゛おぉ゛ぉ゛ぉ!!!!!」 窓ガラスに張り付いている凄まじい形相のれいむを見つけ、腰を抜かした。 *** 「ごのっ!!はやぐっ!!れいむをっ!!おうちのっ!!なかにっ!!いれろ゛っ!!」 それはとても大きなれいむだった。体長は約60センチほど。 恐らく野良だろう。 髪は油じみたものでベトベトのテカテカ、全体的に黒く汚れた肌とリボンは謎の分泌液にまみれている。 ガラス越しの向こうでなにやら吼え、歯を剥き出しにして猛り狂っていた。 「ゆへっ、ゆひぇっひぇ、ゆっひぇっひぇっひぇ………」 れいむの後ろには、恐らく番であろうまりさがいる。 体長はれいむと同じくらい。 汚れ方も似たようなものだった。 トレードマークの山高帽はボロボロで、つばが千切れかけている。 ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべて、うどんげを見つめていた。 「おきゃーしゃん、ゆっきゅりやっちゅけちゃっちぇにぇ!」 「しぇーしゃい!しぇーしゃい!」 「れいみゅちゃちはちゅよいんぢゃよ!?しゃっしゃとこうしゃんしちぇにぇ!!」 「どりぇーにしちぇあげりゅ!」 まりさとれいむの間を跳ね回っているのは、子ゆっくりと赤ゆっくりだ。 子れいむと子まりさが2匹ずつ。 赤ゆっくりはれいむとまりさが1匹ずつ。 全員が全員、口汚く騒いでいる。 ガラスを挟んだ家の中、うどんげはへたり込んでいた。 驚き竦み、腰を抜かしたのだ。 元来が臆病な上、彼女は飼いゆっくりである。 どうしても目の前の醜悪なものに恐怖心を覚えてしまっていた。 れいむが窓ガラスにぶつかる度に、バンッ、という音が響き渡っる。 未だ窓は割れる気配を見せない。 だが、この先はどうだろうか。 そんな不安を抱かせるほどに、れいむは激しく身体をぶつけている。 ―――怖い。 体に震えが走った。 涙がこみ上げてきた。 うどんげは座り込んだまま、必死に後ずさる。 「ゆっぐりっ!!でぎないっ!!まどさんはっ!!さっさとっ!!じねっ!!!」 「れいむ。おちつくのぜ」 いきり立つれいむにまりさが声を掛ける。 粘着質な視線をうどんげに向けたまま、まりさは話し始めた。 「そんなんじゃいつまでやってもまどさんをやぶることなんてできないのぜ」 「だったらどうずればいいのおおおぉぉぉ!!!?」 「これをつかえばいいのぜ」 ぼろぼろの帽子から何かを取り出すまりさ。 れいむの目の前に置かれたそれは、拳大ほどの大きい石ころだった。 「これをくちにくわえてぶつかれば、まどさんなんてなんでもないのぜ」 「ゆううぅぅ!!さすがれいむのだーりんだよおおおぉぉ!!」 「それほどでもないのぜ」 れいむの賞賛にも、まりさの態度は素っ気無い。 依然としてその目はうどんげを見つめたまま。 「おかーしゃん、やっちゃえー!!」 「ゆっきゅりできにゃいまどしゃんは、しぇーしゃいだよ!」 「ゆひひっ。がんばるのぜぇ、れいむ?」 「ゆん!!ゆっくりできないまどさんは、れいむがせいっさいっしてやるよ!!」 子ゆっくり達の騒がしい、まりさの蛇じみた応援を受けてれいむは石を銜えた。 ぐっと力を込め、ガラスの向こうのうどんげに対して嘲る。 「このゆっくりできないまどさんをせいっさいっしたら、つぎはおまえのばんだからねぇ!! どれいにしてしぬまでこきつかってあげるよ!!」 ―――怖い、怖いよ。助けて。 背中が壁に着いた。 涙が溢れる。震えが止まらない。 うどんげは縮こまって、恐怖することしか出来ない。 「ゆ゛~っぐりぃ!!ゆ゛ぅ゛~っぐりいぃ!!じねえええぇぇぇ!!!」 れいむは跳んだ。 顔面に張り付いた笑みは、もうすぐ手に入るゆっくりプレイスを思い描いての事だろう。 れいむと窓ガラス、両者の距離は縮まる。 20センチ、10センチ、5センチ、1センチ…… そして、ゼロ。 ―――助けて、お兄さん! 助けは来ない。 誰もうどんげを助けはしなかった。 窓ガラスが割れてれいむが入り込んできても、うどんげはただ震えて見ていることしか出来なかった。 *** 散乱するガラス片。 割れた窓から吹き込む寒風。 それが意味する所は、野良ゆっくりの侵入を許したと言う事に他ならない。 「よっと。おちびたち、もうでてもいいのぜ」 「ゆっきゅちー!!」 「きょきょをれいみゅたちのゆっきゅりぷれいしゅにしゅるよ!!」 上手く割れたガラス窓を潜り抜け、帽子の中から子ゆっくり達を降ろすまりさ。 どれだけ動き回ろうと、常にうどんげだけを見続けている。 「ゆぎゃあああああああ!!!れいぶのおぉ!!れいぶのまっしろなはがあああぁぁぁ!!!」 部屋の隅で転がっているれいむは、前歯が折れ散っていた。 飴細工の歯で石を銜え、ガラスと勝負したのだから当然と言えば当然である。 「おちつくのぜ、れいむ。そんなことよりも、ゆっくりプレイスがてにはいったんだぜぇ?」 「れいみゅちゃちのゆっきゅちぷれいちゅだにぇ!!」 「ゆぎ……でぼ……でいぶのはがぁ……」 「もとのばしょにさしときゃすぐになおるのぜ。それよりも……」 まりさのおさげが指し示した先には。 ―――逃げなきゃ。 うどんげは這い蹲りながら逃げていた。 腰はまだ抜けている。 だからといってあのまま震えているのは嫌だった。 どこか隠れる所を探さなければならない。 まずは逃げなければ。 あの野良ゆっくりは、怖い。 うどんげの胸ほどに迫る体長で、それが2匹なんて勝てる気がしなかった。 下手をすれば殺されてしまうかもしれない。 まずは逃げて、それから――― 「どこにいくつもりなんだぜぇ?」 考えられたのはそこまでだった。 衝撃が走る。 体が地面に叩き付けられた。体の自由が利かない。 全身が痛い。何かに押さえつけられている。 この状況で、それが意味する所はつまり。 うどんげはまりさに圧し掛かられていた。 「にげるなんてゆっくりしてないやつなのぜ。まりささまがどれいにしてやろうっていってるのぜ?」 まりさはぐにぐにと底部に力を込める。 うどんげはまりさに押さえつけられ、苦しげに声を出す事しか出来ない。 圧倒的優位に立った今、まりさは隅々までうどんげを舐めるように見回す。 「……やっぱり、おもってたとおりのびゆっくりなのぜ」 うどんげの耳元でぼそりと呟くまりさ。 そしてそのまま、 「ゆべっ……ぇろぉんっ」 うどんげの頬を、思いっきり舐め上げた。 ―――気持ち悪い!! うどんげは総毛立った。 おぞましさなどという生温いものではない。 頬にはべっとりと唾液がつき、まりさの舌と糸を引いている。 「おまえはこれからまりささまのすっきりーどれいにしてやるのぜ。ありがたくおもうのぜ?」 れいむには聞かれないよう、そっとまりさは囁く。 今もその視線は厭らしいものを含んでいる。 完全にうどんげを『そういう風に』見ている目だった。 「ゆっ!!まりさ、そのゆっくりできないのをせいっさいっしてるんだね!! れいむもせいっさいっするよ!!」 「れいむ、ちゃんといかしておくのぜ?このどれいにもまだつかいみちはあるのぜ」 「わかったよ、まりさ!!」 れいむも復活した。 どすんどすんと鈍い音を立ててうどんげのほうへと跳ね寄っていく。 まりさがうどんげの上から退いた。 代わりに来たのは、れいむの体当たりだった。 弾力のある体がぶつかる。 うどんげは吹っ飛んだ。 「ゆっへん!!れいむはつよいんだよ!!くそどれいはれいむのつよさをおもいしってね!!」 「おかーしゃん、ちゅよーい!!」 「くしょどれいはれいみゅのちゅよしゃをおもいちってにぇ!!」 ごろごろと床を転がるうどんげ。 その場でふんぞり返るれいむ。 倒れたうどんげの上に乗り、ぽむぽむと踏みつける子ゆっくり達。 ―――痛い。 れいむの体当たり自体は、それ程痛くなかった。 今上に乗っている子ゆっくり達の攻撃も、それは同様だ。 だが床に叩きつけられた時の痛みは酷いものだったし、それに、心が痛い。 ―――痛いよ、お兄さん。 胸がズキズキと痛む。 目の奥が熱い。 そして誰も助けてくれないと言う事実が、うどんげの心を打ちのめす。 泣き喚きたい衝動に駆られていた。 大声で泣いて、誰かに助けを求めたかった。 そうだ。泣いてしまえば少しは楽になるかも――― 「どれいのぶんざいでなにないてるの!?うっとおしいからだまっててね!!」 れいむの揉み上げがうどんげの頬を張った。 ただ泣くという事すら、彼女には許されていない。 今のは痛かった。もう二度と味わいたくない。 うどんげはなんとか、泣くのを堪えた。 「ほら、いくよ!くそどれい!!」 れいむがうどんげの髪を噛み、そのまま引っ張った。 うどんげの頭に痛みが走る。 痛みが嫌ならば、大人しくれいむの後をついていくしかない。 自慢の髪が、今や縄の役目を果たしていた。 *** 一つだけ幸運だとするならば、この野良ゆっくり達はそれほど頭が良くなかった事だろう。 「ゆゆ!?おいしそうなにんじんさんがあるよ!!」 「ゆわーい!」 「にんじんしゃんたべりゅー!」 「おいくそどれい!にんじんさんをとってこい!!」 うどんげは昼食の人参スティックをれいむ達に差し出さなければならなかった。 ラップを外し、れいむ達の前に皿を置く。 「むじゃっ!!むーじゃ!!し☆あ☆わ☆せぇ~!!」 「くしょどりぇいにしちぇはじょーできだにぇ!!」 「にんじんしゃんたべちゃらうんうんしちゃくなっちぇきちゃよ!!うんうんしゅるよ!!」 うどんげが食べる筈だったものは全てれいむ達に食べられ、皿の上には代わりに山盛りのうんうんが残された。 「くそどれいはくそどれいらしく、れいむたちのうんうんでもたべててね!!げらげらげら!!」 「おお、あわりぇあわりぇ」 「まりしゃたちのうんうんたべらりぇるんだよ?うれちーでしょ!!ぷすー☆」 れいむ達は冷蔵庫、戸棚の存在を知らないようだった。 その中にある食材・菓子には一切手を触れず、ティッシュなどを貪り喰らう。 お陰で部屋の中はそれほど荒らされたというわけではなかった。 「ゆ?おいくそどれい!!れいむはこっちにいくよ!ついてこい!!」 「ちゅいてきょーい♪」 「どりぇいはほんちょうにのりょまだにぇ!!」 髪を引っ張られて、家の中を引き回された。 「ゆ!こっちになんかあるね!!」 「ほんちょだにぇ!!」 「ここもれいみゅたちのゆっきゅちぷれいちゅにちようね!!」 れいむ達はドアを認識できなかった。 視界的に繋がっている部屋しか見つけられないのだ。 お陰で全く被害に遭わない部屋の方が多かった。 「ゆへへ……どれいはまりささまにつかえられて、ほんとうにしあわせなのぜ? まりささまのちょうあいをうけるなんて……れろっ、そうそうないのぜ。 はむっ……ゆひぇっ、びゆっくりってやつは、ほんとうにやみつきになるんだぜぇ」 目を血走らせたど変態のまりさに、体中を舐めまわされた。 「いいのんかぜ?……ここがいいのんかぜ? ゆひぇっ、いやがるふりしててもまりささまにはわかるのぜ。かんじてるのぜ? やっぱりかいゆっくりのはだは、ほんとうにうまいのぜぇ」 足、手、首筋、頬と、まりさは変態的な情熱を持ってうどんげを舐め上げた。むしろそれ以外は全くやらなかった。 本気で嫌がられているのに、それを曲解してさらに熱を上げるという偏執ぶりも兼ね備えている。 最も賢いであろうまりさがうどんげのみに執着し、他の事に全く関心を持たなかったのは幸いだった。 「ゆんっ!つよいつよいれいむにくらべて、ほんとうにくそどれいはよわっちいね!!」 「くしょどりぇい!くしょどりぇい!」 「こんにゃによわくちぇはじゅかしきゅにゃいの?くしょどりぇいはほんちょうにくじゅだにぇ!!」 れいむ達の気分でうどんげは突き飛ばされ、踏みつけられた。 ただ悦に浸るためだけに、赤ゆっくりにまで馬鹿にされた。 仮にも胴付きである。この程度の攻撃では、大した怪我を負うはずも無い。 心の方はともかくとして。 総合するなら。 野良ゆっくり一家の襲撃、その被害は軽微と言っていいだろう。 うどんげ個人を考慮に入れなければの話であるが。 *** 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆ~ゆ~♪」 「おきゃーしゃん、じょーじゅだにぇ!」 「ゆふん、それほどでもあるよ、おちびちゃん!」 得意絶頂な鼻歌を披露するれいむに引っ張られて、うどんげは二階へと上っていた。 一階はあらかた荒らし尽くされている。 れいむの餡子脳でも、二階へと続く階段の意味は何とか理解できたようだった。 ―――辛い。苦しい。 そう思っていても、うどんげは何も出来なかった。 沸き上がる感情より、恐怖の方が勝っている。 今はじっと耐え続けるしかなかった。 そうやって来るかどうかも分からない助けに期待しているだけだ。 既に自分の部屋は荒らされ放題だった。 ところどころに糞尿を撒き散らされ、尚足りないとばかりにれいむ達は家具を破壊しようと試みている。 どうやら奴隷が立派な部屋を持っていたのが気に食わないらしかった。 「……ふんっ!」 またもれいむに突き飛ばされる。 床に倒れこんだ。 ―――耐えなきゃ。 耐えれば何とかなる。 お兄さんが帰ってきてくれる。 それまでは耐えるんだ。 「おお、あわれあわれ!くそどれいはそうやってみじめなのがおにあいだよ!!」 「げりゃげりゃげりゃ!ほんちょうにみじみぇにゃくじゅだにぇ!」 侮蔑も顕に笑うれいむ達。 うどんげの事を唾棄すべき屑だと、完全に見下している。 この家の主は自分達だと疑っていないような顔だった。 「………いったいなにをそんなにがまんしているのぜ?」 ただ一匹、まりさだけは違った。 訝しげな視線をうどんげに投げかける。 目の前の玩具が、健気に何を耐えているのか知りたいのだ。 だが、まりさにも全く分からないわけではない。 ある程度の検討はついているのだろう。 唇の端が吊り上げる。まりさもまた笑っていた。 「もしかして、このおうちにすんでるにんげんでもまってるのぜ?」 ―――! 図星だった。 顔を上げるうどんげ。 見上げた先には、まりさの舌が轟いていた。 「……ゆひぇっ、ひぇっ」 まりさは引き攣るような笑い声を発する。 ぬめる舌先がうどんげの頬に触れた。 ゆっくりと舐め回しながら、徐々に襟元へと落ちていく。 「きたいしてもむだなのぜぇ?にんげんがきても、まりささまにはかてないのぜ」 ぬるり、と音を立ててブラウスの中に舌が潜り込んだ。 蛇のような舌が体中を這い回っていく。 もう何度目になるか分からない悪寒に、うどんげは震え立った。 「いくらにんげんがつよくても、まりさにはひさくがあるのぜ」 心底うどんげの味を愉しんでいるのだろう。 緩み切った表情のままで、まりさはお下げを帽子の中に突っ込んだ。 そのままゆっくりと、何かを取り出す。 ―――それは。 それが何かを、うどんげは知っていた。 過去一度だけお兄さんに教えてもらった事がある。 ヒトを傷つけて、殺してしまうこともできる代物だと。 鈍色の刀身は所々錆び付き、刃毀れを起こしている。 捨てられた物を拾ったのだろう。 まりさのお下げが揺れる度に、鈍く光を返した、 それは、一本のナイフだった。 刃渡りは10センチ程度しかない。 だがそれでも、殺傷力は充分に備えているだろう。 ゆっくりの身で人を害する、その可能性を持たせる凶器。 確かにまりさの言っている事は虚言ではなかった。 まりさの「秘策」は、脅威となり得る。 「このないふさんがあれば、にんげんくらいかんたんにころせるのぜぇ!!」 「にんげんもどれいにしてれいむたちのうんうんたべさせてあげるよ!!」 「よわっちぃにんげんにゃんてしゅぐにこりょせるにぇ!」 「くしょどれいをふやしょうにぇ!」 高らかに笑うまりさ。 お兄さんをも奴隷にしようと言うれいむ。 それを聞いて盛り上がる子ゆっくり達。 止めようとする者はいない。 殺意の有無は、疑うまでも無いだろう。 必要ならば、このゆっくり達は本当に人間を傷つけかねない。 ―――お兄さんを、殺す? 無論、ゆっくりが人を害しせしめる可能性はそれでも低い。 身長の問題である。 60cmほどのゆっくりでは、どう頑張っても人間の腰より下にしか届かない。 足にナイフを突き立てられても人間はそう簡単に死なない。 返り討ちに遭うのが関の山だ。 だが。 うどんげは想像してしまった。 もしも万が一、お兄さんがこのゆっくり達の体当たりを受け、転んでしまったら。 もしも万が一、倒れこんだお兄さんにまりさが圧し掛かり、ナイフを突き立てたら。 もしも万が一、そのナイフが心臓に刺さってしまったら。 いずれも馬鹿らしくなるほど低い可能性ではある。 しかし、決してゼロではない。 だからうどんげの脳裏に描かれた光景は、実現されるかもしれなかった。 血の海に倒れ伏す、お兄さんの姿を。 瞬間、意識が赤熱した。 視界が赤く染まり、何も聞こえなくなっていく。 収斂された心は一つの感情を作り出した。 それは、怒り。 何処かで何かが音を立てて千切れ飛ぶのを、うどんげは遠くに感じていた。 (後編に続くかも知んない) 挿絵:
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ちせ / ちせ 【ちせ】 ポップンミュージック Sunny Parkで初登場したキャラクター。 元々はjubeat初出のアルストロメリアのジャケットに描かれたキャラクターである。 名前の考案者はTAG#?、デザイン担当はちっひ。 ちせ / ちせ 誕生日 担当曲 ポップンSP アクション(pmSP) キャラクターポップ 台詞 ネット対戦 関連キャラ、用語リンク 出身地 趣味など すきなもの きらいなもの BEMANI Backstageの第19回において、TAG#?がこのキャラクターの名前を名付けた。 誕生日 3月25日 作曲者のTAG#?の誕生日でもあり、担当曲の曲名であるアルストロメリアの誕生花がこの日に該当する。 担当曲 ブルームフュージョン [ブルーローズイノセンス] ポップンSP 満開の桜の中での卒業式…。ちょっぴりさみしいけど笑顔でサヨナラ! アクション(pmSP) NEUTRAL 卒業証書を持ちながら歩く。他のアクションも卒業証書を持っている状態でアクションしている。 GOOD 春風を感じつつ、髪を整える。 GREAT その場で回転。 FEVER 投げられた花束をキャッチし、眼がウルウルに。 MISS 袖が何かに引っ掛かり、不満顔。 JAM DANCE 【左右移動型+障害物型】GREATの回転アクションを行いながら、左右に動く。加えて桜の花のエフェクトも周囲に発生する。 WIN FEVERと同じ。 FEVER WIN 写真を取り、笑顔を見せた後、ジャケットの風画になる。 LOSE FEVER WIN同様に写真を撮ろうとするが、突風が起こり髪を乱され、不機嫌な顔になる。卒業式台無しオチ。 キャラクターポップ 【色違い】 上段はDDRに移植された際のバージョンであるwalk with you remixのジャケットにおける、ちせの配色が元となっている。 台詞 ネット対戦 攻撃 ダメージ GOOD BAD WIN LOSE 関連キャラ、用語リンク TAG#? このキャラクターが描かれているレアカード 【あつまれ!ピンクっ子!】 【The Picked out Artist -TAG-】 キャラクター一覧/ポップンミュージック Sunny Park
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注意 勢いで書いたので多分内容メチャメチャです。 ある日、真っ昼間に海パン一丁で「コイツに関わったら自分も警察行きだ・・・」 なんて素晴らしい感想をもらえそうなダンスを公園のど真ん中で踊り狂っている 一人のお兄さんがいました。 それは・・・、その正体は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「この俺だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 さあ!みんな!今、俺のアドレナリン状態は大変なことになっている。 さらに!俺の前にはたくさんの見物客がいる! みんな警官のコスプレをしながら俺にスピーカーで話かけている。 正直テンションが上がりすぎていて、スピーカーから聞こえてくる音なんて聞こえない けどな!!!!! それにしてもリアルなコスプレだなぁ。警棒とか本物にしか見えないし・・・。 お!さらにお客が増えたぞ!これで合計20人突破だ!!!!! 夕方、お客さん達は一人も居なくなっていた。 これは後に教えてもらったことだが、あの警官達は本物だったらしい。 人生、何があるか全く分からないものだ。 そのあともいろいろ考え込んでいるうちに、いつの間にか俺は山の中にいた。 どうやらいろいろ考え込んでいるうちに森の中まで来てしまったようだ。 早速、脱出を試みるが、辺は真っ暗、おまけに自分が何処にいるのかも分からない 状況である。この状況で海パン一丁男が出来ることといえばとりあえず 食べ物を探すか、安全な寝床を確保するか、のどちらかである。 しかし!!!俺はそんな消極的な方法はどちらも取らない。 そう!俺が出来る事といえば奇声を発しながらとりあえず走り回ることだけである。 そうと決まれば早速逝くぜ!!!!!!!!!!!! 「キシャァアアアァッァァッァァッァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」 あれから何分間走ったかはわからんが、とりあえず開けた場所に出た。 あー。眠いなぁ。ウフフフフ・・・。あれ?・・意識・・が・・・。 朝、俺は外から聞こえてくる騒音に起こされた。 そして、なぜか木の柵が俺を囲んでいた。 体には植物の蔦が縛り付けられており、何事か?と顔を上げた。 「ゆ!にんげんがおきたんだぜ!だれかさっさとドスをよんでくるんだぜ!」 「ゆゆゆ!わかったよ!いますぐドスをよんでくるよ!!」 その瞬間、俺は自分の身に何が起きたのかを瞬時に理解した。 説明すんのが面倒いから説明はしないがな! ズシン、ズシン、という音と共に何かが俺に近ずいてきた。 !! こ、コイツは!例の巨大饅頭じゃないか!! しかしデカイなぁ・・・。体長は3mあたりは有りそうだな。 「ゆ!コイツが例の人間だね。」 「そうだぜ!こいつがまりささまのごはんをうばいとったんだぜ!!」 ????????? 何を言ってんだこいつは?テメーらの食ってるキタネー虫やら葉っぱなんて 食うわけねーだろがぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!! この俺様がお前ら下等生物が貪ってる糞不味い飯を口に入れてるでも思ってんのか!? あー。死ね死ね死ねオケケケケケケケケケケケケケケケケケケ!!!!!!!!!! 「この人間さんがこのまりさのごはんさんを盗んだのは間違いない?」 「ま、まちがいないんだぜ!!ぜったいそうなんだぜ!!!」 「人間さん」 「何?」 「あのまりさが人間さんにご飯を取られたって言ってるけど 「あ?んだこら?お前ら、人間が普段なに食ってるか知ってんのか?」 「ゆ!それなら知ってるよ!美味しいお野菜さんとかあまーいお菓子とかでしょ?」 「うむ、それなら話が早い。もう一度よく考えてみろ。俺はお前の言ったとうり 毎日のように美味しい野菜や甘ーいお菓子を食べている。その人間がなぜお前らの食っている クソ不味い虫やら雑草なんて盗んで食わないといけないんだ?」 「ゆ!ど、どす!そいつのいってることなんかどうでもいんだぜ!! さっさとそいつをころすんだぜ!!」 「ゆ?まりさ?なんでそんなに焦ってるの?」 「ゆゆぅ!!?あ、あせってなんかないんだぜ!! そんなことよりあのクソにんげんをころすんだぜ!?」 「れいむ。ちょっとあのまりさの家の貯蔵庫を調べてきて。」 「ゆ!わかったよ!」 数分後 「ゆゆ!どす。まりさのいえににんげんさんのおかしがあったよ!」 「ゆがぁ!!!!そ、そのれいむはうそをついてるんだぜ!!! どす!あのれいむのいうことなんかむししてさっさと あのにんげんをころすんだぜ!!!!」 そこで、すかさず俺が、 「あれぇ?そういえば俺の海パンに挟んであったお菓子がなくなってるなぁ おかしいなぁ?誰かに取られたのかなぁ。俺のカロリーメイト。」 すると、まりさの家から黄色い箱が運ばれてきた。 箱の裏には茶色い文字で「カロリーメイト」と確かに記されてある。 「まりさ?これはどうゆうこと?」 「こ、これは!! 「ちょっと待ったぁ!!!!!!」 「ゆゆ!?どうしたの人間さん?」 「いや、その馬鹿まりさに変わって俺が説明しよう。オーケー?」 「そのにんげんのいうことは 「まりさは黙ってね!人間さん、どうゆうことか説明して。」 「どうじでぞんだごど 「うむ。まあ細かく話すと面倒だから簡単に説明しよう。 まず、あのまりさは寝ている俺を発見し、何か持っていないかと俺の 持ち物を物色し始めた。そこで、俺が所持していたカロリーメイト 発見し、自分の家に持ち帰った。 そこまではよかったが、問題はその後だ。 あの人間が起きたらどうしよう、そこであのまりさは俺に何らかの 罪を着せることで有罪になった俺をドス魔理沙に殺してもらい、 自分はそのまま家に帰って俺から「盗んだ」食べ物をもしゃもしゃ と食べてしまおう、と考えていた訳だ。分かった?」 「ゆがががががががががががががががががががががが」 あ、失神してる。 「どうやら本当だったらしいな。どうだ?ドスよ。これで俺は無罪放免 てことで、じゃ!このまりさ貰って帰るわ!!!」 「ちょっと待っt ドス魔理沙の発言を完全に無視してまりさを抱えたまま山を駆け下りた。 が、 自分が今何処に居るのかも分からないため、道を引き返そうと考えたが、時既に遅し。 完全に諦めモードで歩き回っていたらいつの間にか家の前に到着。 帰ってきた喜びと、山から無事脱出できた安心感のせいで顔面崩壊。 大量の鼻水と滝の様な涙を流し、左手で気絶しているまりさ掴んだまま玄関の扉を開ける。 「ゆ?おじさんだれ?ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ? あまあまさんをくれないんだったらさっさとでていってね!!」 顔面蒼白。 なんで30匹近くもクソゆっくり共がいるんだ?しかもこのタイミングで。 ふざけとんのかコラ?ぶっ殺したんぞコラ?コラ?コラコラコララララララララ!!? 「必殺!!!海パン・ローリング・エスプレッソマウンテン!!!」 そう叫んだ直後、俺はストレートに横ローリングし始めた。 「ゆゆ!?にんげんがこっちにくるよ!おちびちゃんたち!ゆっくりにげるよ!!」 「「「「「「「「「「ゆっきゅりにげりゅよ!!」」」」」」」」」」 そう言ってゆっくり共が移動を開始。当然、俺はそれを転がりながら追尾する。 「どぼじでおいがげでぐるのおおおおおおおおおおおおおおお!!????」 「お前たちがにげるからだよおおおおおおおおおおおおおおお!!????」 転がりながら絶叫。 「でもどまっだらゆっぐりでぎばいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「永遠にゆっくり出来るよおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 再度絶叫。 「おうじがえるううううううううううううううううううううう!!」 「帰らせるわけねぇだろうがボケ共がああああああああああああああああ!!!」 ぐちゃっ!ぐちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ!!!!! 「でいぶのあがじゃんがあああああああああああああああああ!!!!」 「ばでぃざのいぼうどがあああああああああああああああ!!!!!」 「どぼじでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおおお!!!!??」 次々に俺の体に巻き込まれて死んでいくゆっくり達。 多分残りは後3,4匹位だろう。多分。本当に多分。 悲鳴も少なくなってきたところで、ローリングを止め、何事も無かったかのように スクっと立ち上がる。無論、嘔吐する。床に吐瀉物をぶちまけるのもアレなので、 手にもっていたまりさを顔面に近ずけ、無理やり口を開きそのまま、まりさの 口の中に嘔吐。まりさが何度か痙攣したが、気絶しているので悲鳴を上げる事はない。 「ふぅ。スッキリしたぜ!!おい!れいむよ!気分はどうだ?俺の気分は 最高だぜ!!あれ?そういえばお前、さっきまであんなに赤ゆっくりが いたのになんで今は3匹しか居ないんだ?」 「おばえがごろじだんだろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!??」 「ふっ。おいおい、何かの間違いじゃないか?」 「まちがっでるわけないでしょおおおおおおおおおおおおおおお!!???」 「いやいや、俺はただ単に家に入ってから無性に転がりたくなったから転がりまくっていた訳で、 それに巻き込まれて死んでも文句言えないだろ?不法侵入者は。」 「なにいっでるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!????? ここはでいぶだちのおうちだよおおおおおおおおおおおおおおお!!????」 「じゃあなんであそこの窓ガラスが割れてるんだ?自分たちの家だったら あんなことしなくても入れるだろ、普通。」 「ゆがぁ!!!ぞれはあのまどざんがじゃましたかr 「なんで自分の家なのに邪魔されたんだよ?よく見とけ。本当の入口はこっちなんだよ!」 そう言って玄関の戸を開ける。 「お前たちにこの扉が開けんのか?開ける訳ないよなぁ?わざわざ窓ガラス割って入ったんだもんなぁ!?」 「で、でもさきにみつけt 「先に見つけたらなんでも自分のモノにしていいのか?そうかそうか!! だったらそこに居る3匹の赤ゆっくりは俺が見つけたから俺の物でいいよな!!」 「おじさんなにいってるの?このこたちはれいむn 「ハイハイ、そうですね。」 めんどくさいので流す。 「だったらここはれいむのおうちだね!!」 何でそうなるんだ? 「お前、何処から来んだよ。」 「すぐそこにあるやまさんからおりてきたんだよ!」 「で、この家を見つけたと。」 「ゆゆ!そうだよ!くるとちゅうにまりさはしんじゃったけどまりさのぶんまで ゆっくりしようときめたんだよ!だからこのおうちはわたさないよ!!」 「一つ聞きたいんだが、お前達が住んでいた森にこんな家があったか?」 「ゆ?あるわけないでしょ?おじさんばかなの?」 「じゃあなんで人間が居る所に家が沢山建ってると思う?」 「それはいえさんがたってるところをにんげんがかってに 「わかった、もういい。お前、自分の家はどうやって作った?」 「それはつちさんをいっしょうけんめいほって・・・ゆゆぅ!!?」 「理解出来たか、つまりはそうゆう事だ。お前が頑張って家を作るのと同じでこの家も 俺が汗水垂らして金貯めてようやく作った家なんだ。だからこの家はお前の家じゃない。」 「ち、ちがうよ!ここはやっぱりれいむn グチャッ!! 「まずは一匹。」 そう言ってから潰れて死んだ子れいむを親れいむに投げつける。 「どぼじでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおおおおおお!!!??」 「まあまあ、落ち着け。」 「おちずげるわげないでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!???」 「それ以上叫んだらもう一匹潰すぞ?」 「ゆっぐぅ・・っ!」 「では、早速ですが、れいむさんに質問します。ここは誰の家ですか?」 「れいむのおうちだよ!!」 「不正解!!!!」 ドチャン!! そう叫んだ直後、赤まりさの上に重さ10kgのダンベルが落下し、赤まりさは 悲鳴を上げる間も無く逝ってしまった。 「ゆがあああああああああああああああああああああ!!!でいぶのあがじゃんがああああああああああ ああああああああああああああああ!!!!」 「おいおい、お前が変な答えを言ったせいであのまりさは死んだんだぞ?」 「でいぶはへんなごどいっでないでしょおおおおおおおおおおおおおおお!!????」 「あー、うるさいうるさい。じゃあもう一度聞くぞ?ここは誰の家でしょうか?」 「ゆ”っ、、、、、、ぐぅう、お、おにいさんの、、、おうちで、、、す。」 「大正解!!!。という訳で、見事に答えを言い当てたれいむさん一家には!なんと! 豪華賞品が大量に贈呈されます!!!ではまず、赤れいむさん前へどうぞ!!」 そう叫んだ後、赤れいむの前に大量のお菓子を並べる。 そして、赤れいむが目を輝かせながら近寄ってきたところで、10kgのダンベルを赤にむかって落下させた。 メチョォ!!と威勢のいい音と共に赤れいむの体が四方八方に飛び散る。 「しずもんにはごだえだでしょおおおおおおおおおおおおおおおおお????? どうじであがじゃんごろじじゃったのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!???」 と、親れいむが絶叫。 「ん?どうした?俺の豪華賞品が気に入らなかったのか?」 「あがじゃんごろじだだけでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!????」 「おいおい、何言ってんだよ。ちゃんとあげたぞ?10kgのダンベルを。」 「ぞんなのいらないいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 「今更そんな事言われてもなぁ。まあいいや。お前にも賞品をあげよう。」 「いらないっでいっでるでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 「まあ落ち着け。お前には別の物を用意してある。」 そして、さっき使用した大量のお菓子をれいむの前に並べる。 「ゆ?おじさん、これぜんぶもらっていいの?」 「ああ。それともう一つ、いいものをあげよう。」 「ゆ?べつにいらないよ。それよりさっさとそのあまあまさんをこっちによこしてね!!」 「死ね。」 無表情のままれいむを見つめる。そして、餡子まみれになっている10kgのダンベルを掴み、れいむに話しかけた。 「さっき言った言葉の意味は分かるよな。」 そして、必死に命乞いするれいむに向かってダンベルを叩きつけた。 その後、部屋を掃除した俺はそのままベッドに倒れ込んだ。 完 あとがき あのまりさはどうなったのかって?アイツは次の日の朝に朝食として食べました。ハイ。 すいませんでした。いろいろと。
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『1つだけの願い』 9KB いじめ 自業自得 日常模様 駆除 群れ 野良ゆ 都会 現代 11作目です。 「やべでぇぇぇぇぇ!!」 「おうぢ・・・おうぢ・・・ばりざの、おうぢがぁぁ・・・」 「どぼ、どぼ、どぼじで」 「ゆわぁぁぁぁぁぁぁぁあああああん、ゆわぁぁぁぁぁぁぁああん」 「きょわいよぉぉぉぉぉ」 「あじずの、どがいばな、ごーじでーどが・・・」 「ばぎゃらないよぉぉぉぉぉぉ」 「まりさは、ゆっくりにげるのぜ!のろまでばかなくそにんげんがおいつけるわけ・・・どぼじでぐぞにんげんがいるのぉぉぉぉぉ!」 『1つだけの願い』 とある公園、そこを塒にするゆっくり達が大声をあげている。 大切なものを喪失して嘆くもの、ただ泣くだけのもの、混乱するもの、逃げようとするもの。 だが、それらの思いが届くことはなく、公園に住むすべてのゆっくりが寝床を奪われ、中央の砂場に集められた。 砂場の周りには4人の男が立っていて、ゆっくりではとても逃げられない。事実、こうなるまでに何度も逃げようとしたが全て蹴り入れられてしまった。 『これで全部か?』 「は、はいぃぃ、これでぜんゆんですぅぅ・・むっぎゅ」 涙を流し、ゆぐゆぐと力なく泣くゆっくり達の先頭に立った野良ぱちゅりーがガタガタと震えながら、 男の質問に答える。今にも中身を吐き出しそうだ。 「ゆっ・・・む゛っきゅ・・・に、にんげんさん、どうしで、こんなことを・・・?」 『人間の邪魔をするゆっくりを駆除するんだよ』 「「「ゆゆうううううぅぅぅぅ!!」」」 「・・・ゴク・・・いっせいくじょ・・ゴブ・・・するの?」 ゆっくり達がざわめく中、どうやら奴らの長らしいこのぱちゅりーがかろうじで口を開く。 何度も逆流するクリームを飲み込みながら。 「ゆぐ・・・ど、どうして?・・・ゴク・・・ぱちぇたちは・・ぱちぇたちは・・・ゴク・・ケホケホ・・ ぱちぇたちは、にんげんさんにめいわくなんか・・・か、か、か、かけてないわよ!・・・ゲッホゲッホ・・・むっ・・・ゴクリ」 「「「そ、そうだよ!!!」」」 「「「「なんにもわるいことなんか」」」」 「「「「「してないよ!!!」」」」」 長の精一杯の抗議に、口々に賛同するゆっくり達。 『うるせー!』 「「「「・・・・・」」」」」 だが、一喝で黙り込む。 『あのな、勘違いしてるみたいだけど、お前らが公園に住み着くだけで十分迷惑なんだわ。』 「そ・・・そんな・・・ゆげっほげっほ・・・ゴックリ」 「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」 あまりのショッキングな言葉に、ぱちゅりー以外は言葉を返すことすらできない。 「ど、どうが、どうがみのがじでくだざい!!にんげんざんのごべいわぐには、ぜっだいに、ぜっだいに、かからないようにじばず!!!」 ぱちゅりーは3分間ほど考えたあと、慌てて顔を地面にこすりつけて懇願を始めた。 『本当か?』 「ほんどうでず!!ぜっだいにごべいわぐはがげまぜん!!!」 『そうか。なら俺らも無理に殺しはしないさ。その約束は絶対守れるのか?』 「ばじがい、ありばぜん!!ぜっだいに、ぜっだいに、ばぼりばず!!!」 『それは殊勝なこった。お前らが約束を守るってんなら、ご褒美だ。1つだけ、何か願いを聞いてやるよ。ただし、その約束を破ったら全員加工所な。』 「「「「ゆゆぅぅぅぅぅぅ!!!」」」」 「「「「ごほうび!!ごほうび!!!」」」」 「「かこうじょいやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」 『うるさい!!』 「「「「「「っ・・・・・・」」」」」」 1単語に反応して大声を上げるゆっくりを一喝。こんどはぱちゅりーだけが固まっていた。 「・・・・・・に・・にんげんさん、それほんとう?」 『あぁ。人間は嘘つかないよ。約束を守るなら、の話だからな。』 「ぜ、ぜったいまもります!そのおねがい、みんなでかんがえてもいいかしら?」 『おう、かまわんよ。できれば早めに決めてくれ。』 「わ、わかりました!!・・・むきゅ、みんな、きいてちょうだい!!」 「「「「「おさ、ごほうびってなに??」」」」」 「「「かこうじょいやぁぁぁぁ」」」 混乱してさわぐゆっくり達をなんとかなだめ、ぱちゅりーは人間の言うことを群れに伝えた。 「ゆゆう!れいむ、あまあまがたべたいよっ!!」 「ちがうんだねー!みんなでかいゆっくりにしてもらえばいいんだねーー!わかるよー!」 「む、むきゅ、だめよ。こんなにたくさんかってもらえるわけがないわ。それにめいわくをかけたらかこうじょおくりにされるわ。」 「「「「かこうじょいやぁぁぁぁぁ!!!」」」」 「じゃあまりささまだけかってもらうのぜ!それくらいならめいわくにならないのぜ!!」 「はぁぁぁぁぁ!?なにいってるのぉぉぉぉ!?かわいいれいむならくそにんげんをゆっくりさせて、どれいにできるにきまってるでしょぉぉぉぉ」 「むっきゅうう!なにいってるの!!!みんなかこうじょおくりになるわよ!!」 「「「「かこうじょいやぁぁぁぁぁ!!!」」」」 「とかいはな・・・おうちをかえしてほしいわ」 「ばりざのだがらぼの、がえじでほじいのぜ」 「むっきゅう、だけどおねがいはひとつだけなのよ。いくつもいったらかこうじょよ」 「「「「かこうじょいやぁぁぁぁぁ!!!」」」」 「ねえ、おさはどうおもう?」 「そうだぜ、こうなったらおさにきめてもらうしかないのぜ」 「おさ、とかいはなおねがいをおねがいするわ」 「わかるよー!おさならあんしんなんだねー」 「む、むっきゅうううう・・・・・むぎゅ・・・ごっくん・・・ じゃ、じゃあ、こういうのはどうかしら。ここにすむのがめいわくだって にんげんさんがいってたから・・・その・・・このゆっくりぷれいすはあきらめるから、 ころさないでくださいっていうのは?」 「・・・・」 「そこまでしなきゃいけないの?」 「くろうして、やっとみつけたゆっくりぷれいすなのぜ?」 「あまりとかいはだとおもわないわ」 「わからないよー!おうちをすてるのはいやなんだねー!」 「むきゅ、でも、しかたがないのよ!!いい?えいえんにゆっくりするのはいやでしょう?」 「「「「「まだしにたくないいいいい!!!」」」」」 「かこうじょも、いやよね?」 「「「「かこうじょいやぁぁぁぁぁ!!!」」」」 「だったらもう、これしかないわ。」 「それでいいんだねー、わかるよー。」 「そうだぜ!いきていれば、いつかゆっくりできるんだぜ!」 「またいなかものから、やりなおしね」 群れの古参たちも、野良の経験からそれしかないと言う。 不満そうなものもいたが、幹部や古参、そして長の意見は筋が通っているし、加工所よりはましと、渋々従い始めた。 『お、決まったか?』 「むきゅ、きまったわ。その、このゆっくりぷれいすはあきらm「ゆっくりしね!!!!」ゆゆゆゆ・・・・!?」 突然、成体れいむが1匹飛び出してきて、ぱちゅりーの言葉を遮った。 『それでいいのか?』 「そうだよ!れいむたちはにんげんさんにめいわくをかけないよ!でもれいむたちはおまえらがだいきらいなんだぁぁぁぁあああ!!!だからゆっくりしね!!!!」 「ゆゆっ!そうだぜ!しぬだけなら、まりさたちはめいわくをかけないのぜ!げらげらげらげら」 「わかるよーー!れいむはてんっさいなんだねーーー!!!」 「そんな・・・ぱちぇもきがつかなかったわ・・・」 「「「「ゆっくりしーね!ゆっくりしーね!ゆっくりしーね!」」」」 口々にはしゃぐゆっくりたち。ぽよぽよとその場で跳ねながらゆっくりしねコールをはじめた。 『願いは聞いた。よし、やれ』 「ゆぎょぉぉぉぉぉぉぉぉ」 「ゆべぇぇぇぇぇぇ」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」 男が合図をすると、群れを囲んでいた残りの3人が砂場に入り、手当たり次第に踏みつぶしはじめた。 突然のことに反応できず、悲鳴と断末魔だけがこだまする、黒と白の砂場ができあがる。 残ったのは、ついに長のぱちゅりーとさきほど飛び出てきたれいむだけとなった。 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「むっきょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆゆうううううううううう!!!」 「「どぼじでこんなごとするのぉぉぉぉぉぉ」」 「「やくそくとちがうでしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」 『は?約束は守ったぞ。お前らの願いは、ゆっくり死ねだろ?だからゆっくりを殺したんだが?』 「はぁぁぁぁぁぁああ?ちがうでしょぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ?」 「むっきゅううううう!そんなのって、ないよぉぉぉぉ!エレエレ・・・ごっくん・・・はぁ、はぁ、はぁ」 『何?違ってたのか。それは悪かったな。もう遅いけどな。ぱちゅりー、お前は最初に何か言おうとしてたが、お前の願いは何だったんだ?』 「む・・・むっきゅ・・・ぱちぇは・・・ここをあきらめるから、みのがしてっていおうとおもって・・・」 『ははは、そうかそうか。こりゃれいむが正しいわ。』 「ど、どういうことよ!?」 『はっきり言うとな。お前らが生きてるだけで迷惑なのよ。少なくともそういう人間はいる。だからお前らが、絶対迷惑をかけないって言った時点で、死ぬ以外なかったんだわ。』 「そ、そんな・・・エレ・・・じゃあどうして、おねがいなんてきいたの・・・?」 『あぁ、それはさ。加工所は嫌だから苦しまずに殺して欲しいとか、死んだら一緒に埋めて欲しいとか、それくらいなら聞いてやろうと思ったのさ。俺らも鬼じゃないからな。』 「・・・そんな・・・・」 『だから、ゆっくり死ねって言ったれいむが正しいの。おかげで加工所に行かずに死ねるんだからな。感謝しろよ。』 「そんなあああああああああああああ!エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ・・・む゛っむ゛っむ゛っむ゛っむ゛っむ゛っむ゛っむ゛っ・・・む゛っぎゅ」 『あぁ、死によった。おいれいむ、あとお前だけだぞ。』 「ふ、ふ、ふっざけるなああああぁぁぁぁぁ!!!!」 『なんだよ?』 「ゆっくりがゆっくりに、ゆっくりしねなんていうわけないだろおおおおおおおおお! おまえだああああ!おまえが、おばえが、・・・おばえがゆっくりしねばいいんだああああ ああああああああああああああああああああああああ!!!!」 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!ゆっくりしねぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!」 ただ1匹残されたれいむは、歯茎を剥き出しにし、目を血走らせて怒りの声を上げ、飛びかかる。 「ゆっ!くり!しね!ゆっ!くり!しね!ゆっ!くり!しね!ゆっ!くり!しね!ゆっ!くり!しね!・・・」 れいむは体中ベタベタの液体をまき散らしながら2文字ごとに体当たりを繰り返す。 『こいつはいいんじゃない?あと1個くらいなら載るでしょ?』 『ですね。わかりました。ようやく今日は終わりですね。』 『あぁ、疲れたな。でも最後に余興が見れたな。』 『えぇ、そうですね。たまにはこういうのも良いですね。』 男は意に介さず、軽く言葉を交わすと 「くり!しね!ゆっ!くり!しぎょ!!」 別の男がれいむを捕らえ、手早く箱に詰めて加工所行へ行くトラックに積み込んでいった。 トラックの中は、ガタガタと揺れる同じような箱が満載してあった。 後の2人は砂場の砂をスコップでかき混ぜ、飾りを回収して後片付けをしている。 『まったく、今日は駆除の依頼が多すぎる。なんなんだよ。』 昨晩に降った雪はまだあちこちに残っている。雪の降らないこの町でこんなことは珍しい。 トラックの中、加工所へと揺られるゆっくり達は、ゆぐゆぐと泣きながら、今朝、初めての雪を見て家族ではしゃぎまわった幸せな時間を思い出していた。 そのうるささが駆除の原因になったとは知らずに。 過去作 anko3758 おいわい anko3805 消える声 anko3811 ゆっくりキャンプするよ anko3814 あるドスの受難 anko3823 ゆっくりとしたむれ anko3839 おいしいご飯 anko3841 秋の風物詩 anko3848 リアクション anko3960 利用法 anko4032泥団子 ゆっくりしね=ゆっくりが死ね ただこれがやりたかっただけです。
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俺はちぇんを飼っている。こいつは元は野生の子ゆっくりだった。 そこら辺で怪我をしていたのを拾って傷を治してやったら、懐かれてしまったのだ。 追い出すのも可哀相なので、そのまま飼うことにしたのだった。 そんなある日・・・ 「チュックリチテイッチェネ」 いつものように仕事を終えて家の玄関の前まで来たとき、かすかに中からこんな声が聞こえてきた。 ちぇんの声ではなかった。別のゆっくりがどこからか入ってきたのだろうか? いや、戸締りはきちんとしたはずだ。 とにかく家の中に入り、ちぇんの無事を確認してからさっきの声の主を探そう。 ドアを開けると、もう既にちぇんは玄関に居た。 「おにいさんゆっくりおかえりなさいだよ~」 「ただいま、ちぇん。いい子にしてたか?」 「ゆゆ~ん、してたよ~わかるよ~」 「そうか、よかった。それよりも、ちょっと聞きたいことがある。 お前以外のゆっくりが、家に入ってこなかったか?」 「ゆ~?・・・わからないよ~、みてないよ~」 「そうか・・・うーん・・・」 「おにいさん、なにかあったの~?」 「ああ、さっき玄関の前に立ったときにお前以外のゆっくりの声が聞こえたんでな」 「ゆ~ん・・・わからないよ~」 「そうか・・・」 そのとき、ちぇんは チュックリィ という声が、床下から聞こえた気がした。 「・・・ゆ?おにいさん!いま、したからこえがきこえたよ!」 「・・・下?」 下から声が聞こえた、と聞いて、俺は床に耳を押し付けて、耳を澄ませた。 「・・・チュチュー、チュックリー」 「・・・ああ、聞こえるな。」 「おにいさん!いまからおそとにでて、みにいこうよ!」 「そうだな」 俺は懐中電灯を持ち、ちぇんと一緒に外に出て、 床下を懐中電灯で照らし、中を覗いた。そこには、 「ちゅ~♪・・・ちゅ?」 「ちゅ~ん♪にんげんしゃんだにぇ!」 「ちゅちゅ!にんげんさん!?ちゅっくりちていっちぇね!」 小さな体に不釣り合いな大きな丸い二つの耳に、一本の尻尾。全身灰色。 ネズミに似た、見たことの無いゆっくりだった。 「・・・お前ら、名前はなんていうんだ?」 「ちゅ~?なじゅーりんはなじゅーりんだよ!ちゅっくりよろしきゅにぇ!」 「ちゅちゅー!おちびちゃんのあいさちゅ、とっちぇもちゅっくりちてりゅね!」 「しゃしゅがわたしちゃちのあかちゃんだにぇ!」 三人家族、みたいだな。ただでさえ小さいから、子供はもっと小さいみたいだ。普通の赤ゆより小さいぞ、オイ。 電灯で見渡してみたが、家の物はないみたいだな。名前は、 「なじゅーりん、か」 「ちゅちゅ!ちぎゃうよにんげんさん!なずーりん!」 「え?ああ、そうか。なずーりん、ね。 お前らいつからここに住んでる?」 「ちゅー・・・まえかりゃ!」 「へぇー・・・今まで声が聞こえたことなかったから気付かんかった」 そこまで話したとき、ちぇんが不安そうな表情で、 「お、おにーさん、どんなゆっくりだったの?」 と訊いてきた。 「ん?ああ、見たこと無いけど、危ないゆっくりじゃあないみたいだぞ」 「そ、そうなんだねー、あんしんしたよー。みせてねー」 「ああ、ほら、あそこ」 懐中電灯を地面に置き、ちぇんになずーりんのいる方向を指差した。そのとき・・・ 「「「ぢゅうううぅぅぅぅぅぅぅ!!!」」」 「ゆ?」「ん?」 「ぢぇんはぢゅっぐりぢぇぎないぃぃぃぃぃ!!!」 ああ、そうか、ちぇんは猫型でなずーりんはネズミ型だから・・・ 「にんげんしゃん、なんぢぇぢぇんがいるのぉぉぉぉぉ!!???」 「俺が飼ってるんだよ」 「「「ぢゅううぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」」」 「も、もうここじゃあちゅっくりできないよ!ちゅっくりおひっこししゅるよ!」 「いや、別にいいよ」 「じぇんじぇんよぐないよぉぉぉ!」 「ちぇんにはちゃんと『なずーりんに意地悪しちゃ駄目』言って聞かせとくからさ。な、ちぇん。」 なかなか可愛いし、俺の家から物をとってるわけじゃないからいい、と判断した。 「ゆー、わかったよ~」 「ほらな。 それに、たまに家に上がってゆっくりしてもいいからさ。」 「ちゅー・・・」 というわけで、引越しはせず今まで通り床下での生活を続けるそうだ。 それからは、俺が仕事の時はいつも家に上がらせている。 初めはなずーりん一家はうちのちぇんがとても怖かったらしいが、 最近ではお互いにすーりすーりをしあうほどの仲になっている。 「なんでちぇんはゆっくりできないんだ?」と訊いたら 「よくわからないけどとにかくちゅっくりできにゃいんんだにょ・・・」ということらしい。 本能かねえ? ちなみに、ちぇんが先日こんなことがあったと話してきた。 俺が窓の鍵をかけ忘れたせいで、 俺が家に帰ってくる一時間ほど前に野良ゆっくりが家に入ってきたらしい。その時に・・・ 「ゆっへっへ、ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにするんだぜ!」 「ゆゆ~ん、なかなかいいおうちだね!ここなられいむたちゆっくりできるね!」 「ちゅう?」 「ゆゆ~?まりさたちだれ?ここはちぇんとおにいさんのおうちだよ~、わかってね~」 「ゆ?ちぇんがいたのぜ? ゆふん!そんなことしったことじゃあないのぜ! いたいめにあうまえにでていったほうがみのためなのぜ!」 「かいゆっくりなの?ならにんげんのあまあまさんのあるばしょくらいわかるでしょ? ゆっくりあんないしてね!」 「ゆゆー!かってにひとのおうちにはいってくるゆっくりにあげるたべものさんなんてないよ! おにいさんがかえってくるまえにはやくでていったほうがいいよ!」 「ゆふん!まりさはむれでいちばんつよかったのぜ!にんげんさんなんてけちょんけちょんにのしてやるのぜ!」 「ゆゆ~ん、まりさかっこいいよ♪」 「ゆふん!」 「・・・ばかなんだねー、わかるよー」 「ゆゆ!?」 「ゆ!?なまいきなこというちぇんはゆっくりしないでしねなのぜ!」 「むれでいちばんつよかったなら、そのむれのなかにずっといればしあわせー!できたのに なんでよけいなことしてしにいそぐの?わからないの?しぬの?」 「ゆっがー!ゆっくりできないちぇんはまりさのたいあたりd・・・ゆぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!???」 「ゆ!?まりさ!?」 「「「ちゅちゅー!」」」 「ゆ?なずーりん?」 ちぇんは、先程から姿が見えないと思っていたなずーりん一家が まりさ達に気付かれないように後ろへまわって、攻撃のチャンスを伺っていたのには驚いたそうだ。 まりさが跳び上がった瞬間にまりさのあんよに噛り付き、うつぶせに倒れたまりさのあんよから徐々に徐々に食べていった。 「な、なんなんだぜこいつら!?や、やめるのぜ!いたいのぜ!これじゃああるけないんだぜぇ!」 「「「めーわきゅなまりさはちゅっくちちにぇ!」」」 「な、なに!?こいつら! れ、れいむはこわいからおうちかえるね! まりさはれいむのためにそこのはいいろさんにゆっくりたべられてね!」 「どぼじでぞんなごどいうんだぜぇぇぇ!!?」 「にがさないよ!」 「ゆべぇ!?」 逃げようと窓へ跳ねていくれいむに、ちぇんは体当たりをして突き飛ばした。 「ゆぁぁぁぁ~、ごべんなざいぃぃぃぃ!でいぶはみのがしてぐだざいぃぃぃぃぃ!!」 「ゆ・・ゆへへ、ざまあみろなんだぜ、ばりざをみすてたからてんばつがくだったのぜ」 「ゆぅぅぅ、もどはどいえばばりざがでいぶをづれでぎだんでじょぉぉぉぉぉ!!」 「つ、ついてきたれいむがわるいのぜ!」 「「「もうしゅぐじぇんぶなじゅーりんたちにたべられりゅときになかまわりぇ?ききかんがたりにゃいにぇ」」」 「おお、おばかおばか。 おお、どうも、とおりすがりのきよくただしいきめぇ丸です」 「ゆゆ~ん♪ちょうどよかったよ! きめぇ丸、このれいむをかこうじょにつれていってあげてね~」 「おお、はあくはあく」 「かこうじょやだああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 れいむは、通りすがりの胴付ききめぇ丸に加工所に連れて行かれましたとさ。 まりさは、 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ・・・」 「「「むーちゃ♪むーちゃ♪ちあわちぇ~♪」」」 なずーりん一家に帽子まで跡形も無く食べられてしまいましたとさ。 そんなことがあったらしい。れいむまりさが知らないってことは珍しいのかな?なずーりんって。 あの時引越しさせないで引き留めておいて良かった。おかげでちぇんも無事だったし。 今までおやつは天ぷらの破片だったけど、次は特別にチーズでもあげようかな。 あとがき 休憩に書いてたら思いのほか文が進む進む。 結局3時間位で書き上げてしまった。 つーか「死に急ぐ」とか「天罰が下った」とか「危機感が足りないよ」とかこいつら語彙が豊富すぎ。反省。 なずーりんの台詞も見辛かったかも・・・ そして相変わらず稚拙な文章でスミマセン。感想をお待ちしています。 なずーりん 成体でも通常ゆっくりの子供サイズにしかならない、とても小さなゆっくり。 顔面以外全身灰色、大きな丸い耳、細長い尻尾、硬い前歯を持つネズミのようなゆっくり。 人懐っこい。あと、すばしっこい。常に2匹以上の群れを作っている。 これではネズミそのものなのだが、実は本物のネズミにも襲われるらしい。 常に赤ゆ言葉。「ゆ」を「ちゅ」と発音する。本能的にちぇんとおりんが苦手。 草からゆっくりの中身まで何でも食べる。中身はチーズ。ネズミに狙われるのはこの中身のため? 小さいので他のゆっくりにも簡単に潰されてしまうのも珍しさの要因かも。 今まで書いた物 ゆっくりへの階段 ふらんうーぱっく 下手にパロ物書こうとすると文が進みにくいみたいだなぁ・・・ このSSに感想をつける
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雛人形がいません。 私も雛人形は、今どんなものが人気になっているのかが気になったのです。 そのふたつの節句は、子育てにおいては欠かせない節句です。 子供の時から貧乏だったから、子供の時には、家には雛人形もなかったです。 と思うようになっています。 そして服装などもそれぞれ色違があるみたいです。 結婚ができるなんて夢がある人形だなと感じてしまいます。 私は昔は自分が勉強が好きではなかったから、学校は好きではないし大学にも行かなかったのです。 けれども、この子は大学に行ってほしいです。 雛人形のおうち雛人形まとめしっかり雛人形
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『死を覚悟したにとり 下』 28KB 制裁 差別・格差 同族殺し 番い 群れ 希少種 現代 7. それから数日経った。 山小屋建築の件は滞りなく進む。上司に建築予定地についての報告をまとめ、了承を得た後、資材発注や委託業者の選定。 似たような作業は過去に何度もやって来た事だし、問題など起きない。 ただ、にとりとひなのことが気にかかった。 俺はゆっくり愛好家ではないから、にとりとひなの境遇にどうこうしてやる気はない。にとりとひなが殺されたとしても、 悲しむことはないだろう。だが、目前にある死の危険を、笑って受け入れる生き方に、納得の出来ないとっかかりを感じた。 なるべく考えないようにしたいと思っているが、そうはいかなかった。山小屋建設において、 ぱちゅりーの群れのゆっくりどもをどう諌めるかの問題に対して、未だ対抗策を決めていないからだ。 長のぱちゅりーの顔を思い出すと、どうもにとりとひなの事が気にかかり、鬱になってしまう。 ちなみに、一応最寄の加工所に連絡して、野生ゆっくりの大量引取りについて話をしてみた。すると、 場所と時間の指定があれば、即日で引き取りに来てくれるとのことだった。ただ、捕獲作業まで依頼するとなると、 安くない金額がかかる様なので、捕獲作業は事務所の職員が自ら行おうということになり、 近々に双葉山で山狩りを行うことになるかも知れないと、周りの職員に声掛けをしておいた。 『はあ・・・』 『なんですか、浮かない顔してますね』 『ああ、そんなことないよ。双葉山の山小屋建築の件も、一段落したしね』 『知ってますよ、そこに住み着いてるゆっくりたちの駆除もするんでしょ』 『いや、面倒だし、しないに越した事ないだけどね』 『なんだ、つまんない。是非やりましょうよ』 『あのなあ、下手すれば、双葉山全部のゆっくりを駆除することになるかもしれないだぞ。そしたらとんでもない労力になる』 『え、それは、やだなあ』 『ま、始めの内はお菓子をばら撒いてご機嫌取りをしつつ、それでも揉めるようだったら・・・』 後輩達は、ゆっくり狩りに積極的だった。用があって山に行けば、連中は邪魔はしないまでも罵声を浴びせてくるので、 ゆっくりに良い印象を持っているものはいない。ゆっくりの駆除に賛成なのも、当然な話だ。 俺だって、今後もぱちゅりーの群れのゆっくりどもの相手をしなくてはならないことを考えると、いっその事駆除してやりたい、 そう考えてしまうわけだが・・・。 そして、今日は金曜日。 山小屋建築の計画は実行段階まできた。来週末には業者の人間も双葉山に向かい、資材や重機も入ることになるだろう。 業務を終え、皆土日の休みに胸を躍らしながら、帰路についていく。 俺も、来週の作業予定を確認した後、事務所を出て、自宅に向かって車を走らせていた。 だが、俺の頭の中には、にとりとひなの事が巡っていた。 あいつら、まだ生きているかな・・・ ぱちゅりーの群れと、和解できていないかな・・・ 子ゆっくりたちは、どうしているかな・・・ 自宅に戻り、着替えた後でも、妻と向かい合って座り、夕食を摂っているときも、なかなか頭から離れなかった。 『ねえあなた・・・なんか元気がないわね。お仕事で何かありました?』 『ん・・・』 妻にその様子を感づかれたか。 まあ、仕事の話でも無いし、話してみるか。 『仕事とはちょっと違うけどね。双葉山に、珍しいゆっくりが住んでてね・・・』 俺は、にとりとひなの事、ぱちゅりーの群れとの確執の事を話した。 『え、それって・・・ひどいじゃない。群れに入るか出て行かないと、殺すって言ったの?』 『縄張りの中に住んでるからな』 『放って置けばいいじゃない。誘拐未遂だっけ、それだって放って置いてあげれば、起きなかったんでしょう』 『なんていうか・・・この家の使っていない部屋に、突然知らない人間が住み着いて生活を始めた・・・様なものだよ。 極端な言い方に聞こえるだろうけど、ゆっくりの縄張り意識って、そんなものだ』 知らないけど、多分。 でも確かに、ぱちゅりーが、にとりとひなを出て行かせようとした理由ははっきり分かっていないな。 縄張り意識が原因だったら、幹部のれいむが来た時点で、黙認されることもなかっただろう。いくら権限がないとは言え、 幹部の名において、立ち退きか群れの傘下に収まるかの宣告ぐらいはするはずだ。 正直俺も、長のぱちゅりーの立退き勧告、まりさの誘拐未遂の話を聞いたとき、展開の速さに驚いた。 群れに何があったのだろうか。 『ねえ、だったら、そのにとりちゃんとひなちゃん、うちで飼ってあげたら』 『え、飼う』 『希少種って言うんでしょう、にとりちゃんとひなちゃん。野生ゆっくりでも、ゲス化しにくくて飼いやすいって聞いたし』 そうか、逃げ場が無いなら、俺が保護してやればいい。 そういえば俺、飼いゆっくりにならないかって、声をかけたことあったな。にとりも、悪い返事はしなかった。 珍しいゆっくりを飼うのは、俺も悪い気はしないし。 『いいか?』 『ええ、もちろん』 『わかった』 俺は笑顔で返事をした。久しぶりに心から笑えた気がした。 明日、ゆっくりを迎えにいこう。休日に私服で山に行くのはあまり良くないんだが・・・まあいいだろう。 その夜は妻と、名前は何にしましょうか、いや名前は「にとり」と「ひな」だ、などとちょっとずれた会話をしながら、 寝についた。 そして次の日。 俺はインターネットでゆっくりの飼い方について検索し、該当ページをプリントアウトしておいた。 双葉山の途中にペットショップがあるから、必要なものもそこで買おうと思ったのだ。 午前中に家を出て、車に乗り込む。しかし、俺は、 『・・・』 変な焦燥感に襲われていた。 車の速度が普段より遅い気がして、何度も最高速度をオーバーしかけた。信号の停止時間が普段の3倍に感じた。 ペットショップに寄って、水槽とゆっくりフードを買おうとしたが、素通りしてしまった。 『帰りに買おう、帰りに・・・にとりとひなに選ばせて・・・』 そんなことを言い訳のように呟きつつ、自分自身が急いでいる理由を落ち着いて頭の中で反復した。 殺される。 にとりとひなが、ぱちゅりーどもに殺される。 そう、昨夜は、にとりとひなを救う手立てを見つけたことに舞い上がり、あいつらが今どういう状況にあるかを忘れていた。 ぱちゅりーの群れとの戦端が開かれてから、もう何日か過ぎている。 ひょっとしたら、あの家族は、もう潰されて居ないかもしれないのだ。 『くそっ・・・』 そして双葉山についた。 車を停車させるまでは意識して落ち着いていたが、車を降りてからは全力疾走だった。 双葉山への扉をくぐると、すぐに道をそれ、にとりとひなの住処に向かって駆ける。 大分踏み慣らされた草地を抜け、そこに辿り着いた。 そこは、にとりと、ひなが住処にしていた小川。 普段なら、にとりとひなの番とその子ゆっくりたちが、しあわせな生活を送っているはずなのに。 俺の目前に現れたのは、傷ついたにとり、気絶しているひな、潰されたまりさの死骸が4つ、そして潰されたにとりとひなの子ゆっくり。 「やあ、めいゆう・・・やられたよ」 8. ぱんぱんと、手についた土を払った。 俺の目の前にあるのは子にとりと子ひなの墓。 憔悴しているにとりとひなの替わりに、土に埋めてやった。 因みに、襲撃してきたまりさの死骸は、住処から少し離れた所に穴を掘り、無縁塚のように放り込んだ。 『おちびちゃんのお墓、出来たぞ』 「・・・ゆ・・・ありがとう、めいゆう」 悲しかった。 俺は間に合わなかった。 子ゆっくりを守れなかったし、にとりとひなも、飼いゆっくりになることを拒否した。 恐らく、ぱちゅりーの群れのゆっくりを、一匹でも多く殺し、死ぬつもりなのだろう。 俺の守ってやりたかったものは、全て俺の手から滑り落ちた。 「おちびちゃん・・・」 「くるくる・・・おちびちゃん・・・」 にとりとひなは、お墓の前にお菓子を置いた。俺が前回来た時に、にとりに渡したものだ。 お墓の前で両手、というか髪を両手のように合わせて、子の冥福を祈る親ゆっくり。俺も「ゆんごく」に行ける様に、一緒に祈った。 果たしてにとりとひなの心中はいかなるものだろう。 葬式が終わった後、俺は色々気まずく、帰ろうとするタイミングを図っていたのだが、それを察するようににとりは、 俺に世間話を投げかけて、俺を帰すまいとしていた。 その様子を見て俺は、にとりとひなは寂しがっている・・・そう思った。 子ゆっくりが死んだことで、にとりとひなを縛っていた枷は外れた。もうこの住処に留まる理由はない。 生き続けたいと思うなら、別の土地に逃避すればいい。 ぱちゅりー達に怒っているのならば、逃げたゆっくりを追って群れを襲い玉砕すればいい。 ここに留まり、座して死を待つのは、子ゆっくりに死なれた悲しみから、死に場所を探しているのだろう。 恐怖心も、怒りもない。あるのは悲しみ、そして死の甘受、だがその寂しさ。 『今まで、両親以外の、どんなゆっくりと付き合ってたことがある?』 「そうだね、いぜん、さなえがおさをつとめるむれがあってね・・・」 結局は、ゆっくりの社会にありふれた悲劇の1つに、俺は偶然関わったに過ぎない。 住処の問題の解決方法は「おうちせんげん」しかない。数多くのゆっくりに悲劇を生んだ、欠陥だらけの解決方法だ。 通常種と希少種の差別意識は、昔から有る問題で、その解決方法は人間にすら出せていない。 ぱちゅりーの群れも、にとりとひなも、お互いがお互いに、間違った事と間違っていない事をし、そして起きた結果なのだ。 まして俺は第三者、人間でありゆっくりですらない。ゆっくりの社会にありふれた悲劇の、起きた結果を見ることしか出来ない。 そして時は経ち、カラスの鳴き声が聞こえた。 空を見上げれば、日は傾き始めている。 俺もにとりもひなも、思わず長く空を見上げてしまった。 にとりが申し訳なさそうに、別れの時をつむぐ為に口火を切った。 「おそくなってしまったね、めいゆう。ちょっとはなしすぎちゃったよ」 『いや、いいよ。気にするなよ、話できてよかった。いや、おちびちゃんは本当に残念だったが・・・』 「くるくる・・・おそくまでわたしたちにつきあってくれて・・・ありがとうございます」 「めいゆうにつきあわせてしまって、わるかったよ」 『ん・・・』 いい加減しつこい自分に情けないと思ったが、最後のチャンスだ。 にとりとひなに、飼いゆっくりなってくれるよう、声をかける。 『なあ、思い直してくれないか。俺の所に来て飼いゆっくりになってくれ』 「うん、わるいけど・・・」 『このままぱちゅりーの群れに殺されても、死んだ子ゆっくりは決して喜ばない。悲しむだけだ。それに、』 お別れになればもう二度と、俺はにとりとひなに会うことはない。俺は禁断の言葉を口にする。 『おちびちゃんなら又作ればいい。行き続ければそれができる』 最後の賭けのつもりで言った言葉は、しかし、 「ありがとう。でもにとりにとってのおちびちゃんは、おはかのしたにいる、あのおちびちゃんだけだ」 眉一つ動かさず、笑顔で返された。 俺は、そうか、と一つ呟いて、立ち上がった。 『残念だな。俺は、お前さんと話していると、まるで人間と話をしているようだったよ』 「ははは、じゃあかいゆっくりにはにあわないよ。ぺっとって、かいぬしのまえで、ゆっくりだけをするものだろ?」 『そう、だな・・・それじゃな』 俺は片手を挙げて挨拶をすると、にとりとひなの住処を去った。 もはや、頭の中は真っ白だ。 はっ、と気がつくと車のドアに手をかけていた。にとりとひなの住処から、駐車場まで歩いた記憶がない。 いけない、こんな精神状態で車を走らせたら事故を起こす。 俺は深呼吸をして気分を落ち着け、普段に増して、安全運転をして家に帰った。 家に帰ると妻に、遅くなったことを詫び、にとりとひなの一件を話し、飼いゆっくりは拒まれた事を伝えた。 元々情に脆い妻は、話を聞いて泣いた。 (にとりよ、おまえの不幸を悲しむ人が、又一人いたぞ。) 俺は、明日も知れないにとりのことを思った。 9. 月曜日になった。 いい加減にとりとひなのことは吹っ切れたつもりだった。いや、今はもう、2匹は生きていないかもしれないが。 なるべく作業に没頭して、いやなことは思い出さないようにするに限る。 俺は、メールで送られてきた文章をプリントアウトし、課長のところに持っていく。 『課長、ちょっとよろしいでしょうか』 『おう、どうした』 『双葉山の山小屋の件の、業者の注文書です。後日、判を押されたものを頂いて来ます』 『うん、御苦労。ああ、後さ』 『はい』 『午後にでもゆっくりショップに行って、ゆっくりフードを買ってきてくれるか。ちょっと高級なやつを。 領収書切って。ぱちゅりーの懐柔用のやつさ』 『ああ・・・はい・・・』 『はは、なんだよ、嫌か?』 『いえ、失礼。そんなことはありませんが・・・』 ゆっくりの話になって、つい、にとりとひなを思い出してしまった。 でも、一応話しておくか、全くの無関係ではないし・・・ 『ええ、実は・・・』 俺は、土曜日あったことを、課長に話した。 『ま、そういうわけで・・・』 『そんなことがあったのか・・・でもお前、あんまり、休日に山行くなよ』 『あ、すみません』 『それはともかく、縄張り争いが戦争になったわけか。じゃあ、にとりとひなも、今頃は・・・』 『まあ、分からないですけど、生きていたとしても、近いうちに・・・』 『そうか』 『だからと言って、どうということはないですけどね』 席に戻り、ゆっくりショップの場所を検索する。 なんだ、近場に無いじゃないか。俺の家より遠くに一軒有るだけだ。片道1時間半もかかる。 面倒くさいな、電話で発注するか。 と思ったが、電話で発注するほど大量に買うわけじゃない。税金の無駄である。 仕方なく、午後一で事務所を出て、車でゆっくりショップに向かった。 あんまりのんびりするのも良くないが、初めての物珍しさから、店内を少し見て回る。 「ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 「とかいはなおにいさん!ありすといっしょにゆっくりしましょう!」 「ゆっきゅりしちぇいっちぇくだしゃいね!」 「おお、ゆっくりゆっくり」 れいむ、まりさ、ありすなどといった基本種から、さなえ、らん、きめぇまるといった希少種もいる。 胴付きのゆっくりというのも驚かされた。人間と変わらない。頭と胴体の比率がおかしくて、まるで幼女のようだが。 金バッチのゆっくりともなると高いが、銅バッチなら安い、子供の小遣いでも買える。 にとり、ひなも売っていた。慰めに買ってみようか・・・とちょっと思ったが、まあ今は止めておこう・・・。 さて、時間潰しはもういい。上から数えたほうが早いぐらいの、ちょっとランクの高いゆっくりフードを多目に買うと、 再び車で事務所に戻った。 もう4時だ。 『ただいま戻りました』 『お、お帰り。ちょうどいいところに戻ってきた』 『?どういう意味です』 『双葉山のぱちゅりーの群れの件でな、別の対応策を考えたんだ』 『別の?ゆっくりフードで懐柔じゃなくて?どんなです?』 俺は荷物を置きながら、課長の話を聞く。その方法とは・・・ 『どうだ、単純だが、理に適ってるだろ』 『ええ、まあ・・・なるほど。ていうか、方針が180度変わりましたね』 『懐柔と比べるとな。それはともかく、確認のため、お前毎日、双葉山の確認に行ってくれ』 『ええ!マジですか?!必要なのはわかりますけど・・・』 『その代わり、今日からお前4時あがりでいいから』 『はあ、それなら。ゆっくりフード如何しましょう』 『棚に入れとけ。うまく行くとは限らないから、使うかもしれん』 『はい』 俺は手早く片づけを済ます。 『じゃあ、双葉山に行って、そのまま直帰します』 『わかった。確認取れたら、必ず俺に連絡を入れるんだぞ。あと工事は来週以降って業者に連絡入れておけ。明日でいい』 『はい』 俺は上司から言い渡された秘策を胸に、事務所を出た。 双葉山に向かう。おととい会った、にとりとひなを思い出す。 何も考えない。にとりとひなの姿を思い描くだけだ。もう、俺に出来ることなど何も無い。俺は傍観者なのだ。 双葉山に着く。車を止め降りる、山へ向かう扉をくぐる。 静かに歩く、歩く、歩く。にとりとひなの住処へ。 ここも歩きなれた、急げ、急ぐな、ゆっくり急げ。 俺は、ここを始めて歩いた時を思い出す。無理やり思い出す。 声が聞こえて、その声の主を気まぐれで追った、そして会った。 遠くに小川が見える。にとりとひなが住んでいた、あの小川。 俺はすぐ近くの大木に身を潜める。覗き見る。顔だけ出して、にとりの姿を探す、探す、遠すぎたか、見えない、 見えない、探す、探す、目を凝らす、凝らす。 にとりの帽子。 ひなの、リボン・・・。 潰れた、潰された、ゆっくり。青い青い、緑色の髪。 がさり。 足元で音がした。なんてこと無い。俺の足音。 前に進め、と、脳が指示を、出さ、なくても、俺は、前に、 にとりとひなの住処に、ここはにとりとひなの住処だ。間違いない、だってにとりが、ひなが、ここに、居て、 俺は、こんな結果を、こんなことになるのを望んでなかった、なのに、なんで、なんで、なんで、なんで、 あいつが、なにを、なんで、なんで、なんで 、なん、で にとりとひなは死んだ。ぱちゅりーの群れによって。 理由は、縄張り争い。 俺は、周りを見渡す。まりさが十数匹、ちぇんとみょんが4匹、れいむが2匹、ありすが1匹、死んでいた。 俺は、にとりとひなの亡骸を、両手ですくうように持ち上げ、子ゆっくりの墓の傍に持っていった。 墓は荒らされていなかったが、供えられていたはずのお菓子は、無くなっていた。 子ゆっくりの墓の隣に、また穴を掘り、にとりとひなの亡骸を、埋めた。 ただ、にとりの帽子と、ひなのリボンは、形見にもらった。 他のゆっくりの死骸は放置し、俺は双葉山を出て駐車場に戻る。携帯を取り出し、課長に連絡を取る。 にとりとひなの死を知らせる。 『・・・そうか、分かった。いきなりだったな』 『はい・・・じゃあ、明日?』 『おう、みんなに声掛けておく。お前も明日は、双葉山に直行しろ。7時な』 『分かりました。加工所の方も?』 『加工所も、俺が連絡しておく。お前は帰って休め。大丈夫か?』 『ああ、大丈夫です大丈夫です。じゃ、お先に失礼します・・・』 『おう、お疲れ』 俺は車に乗り込む。 にとりとひなに別れを言った前回とは違い、今度は頭がすっきりしていた。 明日は早い。気落ちしている余裕は、今の俺には無い。 10. 次の日の朝、双葉山につくと、事務所の人間が集まっていた。 特に若者が元気だ。こういう場合、早朝に慣れない若者は少し元気がない事が多いから、これは良いことだ。 『おはようございます!』 『『『おはようございます!』』』 『課長、おはようございます』 『おう、おはよう。昨日はごくろうさんな』 『いえ。』 俺は、課長から大きな袋と、軍手を受け取る。 若くて体格のいい連中は、緑色の大きな網が渡された。 そして、7時になった。事務所の人間は皆集合した。ざっと30人か。 『よし、いくぞ!』 『『『はい!』』』 一斉に双葉山に登っていく。向かうは勿論、ぱちゅりーの群れである。 ゆっくりどもは、双葉山を自分の領土として、人間達に主張してきた。 別に根拠は無いが、対応が面倒であるため、その主張を認めてやった。 だが、その主張とはまったく別の角度の、大義名分があれば、どうなるか。 「むむ、にんげんたちがきたみょん!」 「たくさんでおしかけて、ゆっくりしてないみょん、なんのようだみょん!」 ぱちゅりーの群れにたどり着く。入り口にみはりのみょんが4匹いる。 みょんの言うことは無視し、素早く4匹とも掴み、袋に放り込んだ。 「ゆゆ!おそら!!」 「な、なにするみょん!!」 そんな悲鳴にいちいち返事するはずが無い。皆一様に群れの中に入り込んでいく。 緑の網を持った連中だけが、網を広げて、入り口に陣取った。 群れが静かだと思って進んでみると、ゆっくり達は子ゆっくりも含めて、全員が長の家の前に並んでいた。 ぱちゅりーは演説台の切り株に立ち、何やら話している。 全体朝礼でもやっていたのだろうか。なかなか壮観だ。 ゆっくりどもは、突然の人間の襲来に驚き手間取っていた。 「にんげんだよ、にんげんがたくさんきたよ!」 「みょんが!みょんがつかまってるよ!!」 「なにしにきたのぉおおお!!」 長のぱちゅりーが眼を見開いて喰って掛かる。 「むきょぉおおおお!!なにをしているのにんげんたちぃいいいい!!みょんをはなしなさいいいいいい!!」 『はいはい、ゆっくりゆっくり』 「ゆっくりできるわけないでしょおおおおおおおお!!!どうしてこんなことをするのよおおおおおおお!!!」 そういうやりとりの間に、群れのゆっくりの周りに各自立ち、なるべく逃げられないようにする。 「なんとかいいなさいこのげすにんげんんんんん!!!こんなりふじんなぼうりょくはゆるされないわあああああ!!!」 「そうだそうだ!!!こんなくそにんげんどもなんかせいっさいしちゃえ!!!」 「いいきかいなんだぜえええええ、ちょうしにのりすぎのにんげんどもにめにものみせるのぜえええええ!!!」 『五月蝿いぞゆっくりども!お前ら川岸に住むにとりとひなを殺しただろ!!』 突然の人間の大声に、ゆっくりどもは驚いて静まり返った。 長のぱちゅりーだけが、今の言葉を理解し始めた。にとりとひなといえば、あの不法侵入したゲスゆっくりしかいない。 「むきゅう・・・あのげすなにとりとひなが、どうかしたの?」 ここで課長は、一旦呼吸を整える。周りのみんなも一斉に身構えた。 そして、高らかに宣言した。 『お前たちは人間と同盟関係にあったにとりとひなを殺した!その制裁としてお前らを全員加工所送りにする!』 そして、俺たちは一斉に捕獲作業を開始した。 目の前に居るゆっくりどもを、次々に掴んで袋に放り込む。 「ゆわあああああやめなさい!!!いなかものおおおおおおおおおおおおお!!!」 「やめてねえええええ!!!ゆっくりしてないよおおおおおおおおおお!!!」 「まりさああああああああああああ!!!おさあああああああああああ!!!たすけてええええええええええええええ!!!」 俺達の新たな対策とは。 ゆっくりが想像出来ない、全く別の大義名分を持って、群れを滅ぼすこと。 にとりとひなを、出汁に使ったのだ。 ぱちゅりーの群れは、狩りも、外敵からの防衛も、教育も福祉も一流だった。 だが、唯一つ、外交が弱かった。他の群れや人間とのコミュニケーションは、担当する幹部はおらず、長が兼任していた。 もしぱちゅりーが何か事情があって、別の群れに攻め込みたいと考えたら、その周りの群れに話しを持ち込むだろう。 周りの群れと同盟を結ぶか、最低でも不介入の約束を取り付けるはずだ。 更に、攻め込む群れと交易を行っている群れがあれば、その損害はどう補償するか、新たな境界はどうするか。 こういった問題を解決してから、戦いを挑むはずだ。 だが今回は、にとりとひなを、たかが一家族とみて舐めすぎ、滅ぼすことのリスクを軽視していた。 金網で遮られていたとはいえ、人間と隣接する場所に住んでいたのだ。人間との関わりを疑うべきだった。 「やめてちょうだい!!!しらなかったのよおおお!!!にとりとひなが・・・エレエレエレ・・・」 『知らなかったで済むか!このゲスが!』 捕獲の手はゆっくりどもの巣にも伸びる。巣の中を掻き回してみると、赤ゆっくりが居た。 「おちびちゃあああああん!!!にげてえええええええええ!!!」 「ゆゆ、にんげんしゃん、なにしちぇるの?」 「やめちぇにぇ、いちゃいことしないでにぇ・・・」 「ゆゆ、おちょらを!!」 巣から掻き出した赤ゆっくりは、透明の平べったいケースに並べて入れられた。 赤ゆっくりは多少丁寧に扱わないと、簡単に死んでしまうからだ。 「ゆんやああああああ!!だしちぇえええええええ!!」 「おとうしゃんんん!!おかあしゃんん!!」 などと言っているが、助けなんぞ来るはずがない。 「おちびちゃんんんんん!!!おちびちゃんはだしてあげてねええええええ!!!」 「やめるんだぜええええ!!!おちびをはなせえええええええ!!!」 『五月蝿いぞ、静かにしろ(ゲシ)』 「ゆぎゃ!!」 更に、長の家も調べられた。 『おーい、長の家にありすが隠れてたぞう!』 『長の家?』 俺と課長は顔を見合わせる。 『おお、本当だ』 「いやあああ、はなしなさい!!いなかものおおお!!」 『こいつ、部屋の隅っこで震えていやがったぜ、仲間を見捨てて生き延びるつもりだったのかなあ、ありすちゃん?』 「ありすは!ありすはちがうううううううう!!」 『待った!待った待った!』 俺は、ありすを袋詰めにしようとする職員をあわてて止める。課長も近づいてきた。 『ん、先輩。何ですか』 『いや、このありす・・・』 ぱちゅりーの群れの幹部にありすはいるがこんなに小さくは無い。幹部でもないゆっくりが、長の家に居るわけが無い。 逃げ惑って長の家に隠れたのなら、俺は気付いていたはずだ。 長の家で寝泊りし、長の演説にも参加しないゆっくり。こいつは・・・ 『お前さん、隣の、ありすの群れのゆっくりだな』 震えているありすが、ゆっくりと俺の方を見る。恐怖で怯えながらも、俺の問いに答え始めた。 「そ、そうよ・・・」 『ぱちゅりーの群れに何か用事があって来てたのか』 「べっどさんをうって・・・かわりにごはんさんをうけとる、はずだったのよ・・・」 『べっど・・・』 部屋の奥を見ると、干草を編んで作った、鳥の巣のようなゆっくり用ベッドが10個ぐらい置いてあった。 更に足元に、どこかのコンビニのビニール袋。恐らくこれに入れて運んでいたのだろう。 なるほど、ゆっくり用の家具は、別の群れから買っていたのか。 『じゃあ、ご飯を受け取れば、お前さんの用事は済むわけだな。どれどれ』 俺は部屋を出た。この部屋が何に使われているのか知らなかったが、他所の群れの外交官用の貴賓室だったのだ。 俺は食糧庫に入る。課長と、ありすを手に乗せた後輩も着いてきた。 俺はビニール袋にご飯を詰め込みだした。特に林檎や柿などのあまあまは余さず入れた。 「え、そんなに・・・」 『運べないか』 「はこべるけど、りょうきんにあわないし・・・」 『どうせこの群れは今日滅ぶ。ゆっくりのご飯は人間は食べられないから捨てるしかない。お前さんが持っていけ』 「ひっ・・・」 袋に詰め終わった。後輩はありすを地面に置いた。俺はビニールをありすに咥えさせる。 『ありす、群れに帰ったらこう伝えろ。ぱちゅりーの群れは、人間の同盟国だったにとりの群れを滅ぼしたため、 制裁した。以後、ぱちゅりーの縄張りは、人間が引き継ぐ、と。』 「わ、わかったわ。それじゃ!」 そういうとありすは、あんよで背中を蹴る勢いで、逃げるように去っていった。 『好都合ですね』 『ああ、群れを滅ぼした理由が、すぐ山中に広まる』 『あとは、連中がこのことをどう受け取るかだな』 さて、俺が群れの広間に視線を戻すと、ゆっくりの捕獲は完了していた。 「ゆうぅぅぅ・・・・・」 「たすけてえ・・・・」 「おちびだけは、おちびだけは・・・」 『済んだか』 『ええ、成体、子ゆっくり、赤ゆっくり合わせて90匹ってところですね』 ゆっくりがぎっしり詰められた袋、赤ゆっくりが敷き詰められたケースが並べられた。 長のぱちゅりーは、かなりの量のクリームを吐いて気絶している。死なれてもつまらないし、 オレンジジュースをぶっ掛けたうえで、他のゆっくりどもとは別の袋に入れておいた。 『これで・・・加工所の職員に引き渡して、終わりですかね・・・』 『集団誘拐みたいでぱっとしないなあ・・・何か制裁っぽい感じにしたいんだが・・・』 『そうですね、じゃあ・・・』 俺達は、ただ加工所に連れて行くだけではなく、制裁の儀式を行うことにした。それは・・・ 「あじじじじじじじじ!!!あじゅいあじゅいあじゅいやめてえええええええええええ!!!」 「みょーーーん!!!しぬみょん!!しぬみょん!!たすけてみょーーーーーーん!!!」 「おろじてえええええ!!!あづい!!!あづい!!!おさああああ!れいむううううう!たずけで!!!」 公開処刑を行うことにした。 処刑方法は、ゆっくりを木に吊るし、下で焚き火を行うことによる、火あぶりの刑。 処刑対象は、軍事関係を取り仕切っていた幹部まりさと、適当にまりさ2匹、みょん2匹。 あんよだけを焼くような生易しいものじゃなく、下半身を炭になるまで焼いて、絶命させる。 処刑した5匹のゆっくりは、吊るしたまま放置だ。他の群れのゆっくりどもが、後日様子を見に来る可能性があるから、 処刑が行われたことを見せ付けるためだ。 ちなみに処刑対象から外れたゆっくりは、半分は震え上がり、半分は恐怖の余り気絶していた。 自分が処刑対象にならなくて良かった、などと思っているのだろう。 加工所に送られたほうが、よっぽど酷い目に遭わされるんだけどね・・・どうでもいいけど。 そして午後に、加工所のトラックが双葉山にやってきた。 捕獲した残りのゆっくりを引き渡した。これですっかり終わりだ。 『あ、お疲れさまです』 『済んだな。これで工事は遅らせずに済みそうだな』 『ええ、事務所に戻りますか』 『そうだな・・・これで、他の群れのゆっくりどもも、大人しくしてくれればいいんだがな』 『駄目なら、ゆっくりフードでご機嫌とって。それでもがたがた言う様なら・・・』 『・・・そうだな・・・』 皆、車で事務所に向かっていく。 俺は、にとりとひなの住処があった方を一瞥し、車に乗り込んだ。 11. あれから二週間が経過した。 山小屋建設は本格的に始まった。頑丈な鉄製の柵、ゆっくり対策用の強化ガラスなど、予定通り、 ゆっくりの襲撃を考慮した作りとなった。 『ふう・・・』 俺は現場監督と会い、予定通り作業が進んでいることを確認し、挨拶して回った。 『結局あいつら、大人しくしてくれたなあ・・・』 俺達が一番恐れていた、ありすやまりさの群れからの襲撃は無かった。 人間が起こしたぱちゅりーの群れへの制裁を、他の群れは正当な行為として受け入れざるを得なかったのだ。 ありすの群れは、「とかいはなかぐ」の最大の輸出先を失い、食糧が不足傾向になっているようだ。 今は新たに交易品を増やそうと、すぃーの開発を行っているようだが、なかなか上手く行っていない様である。 まりさの群れは、元ぱちゅりーの群れとの街道を封鎖してしまった。このままでは人間には滅ぼされる判断したのだろう。 群れを拡大しようと、森の奥側に隣接するえいきの群れを攻め落とそうと企て始め、人間とは関係ないところで、 小競り合いを繰り返しているらしい。 結局ゆっくりは、人間の強引なやり方に対抗する気概は無く、人間に屈した、ということだった。 勿論油断は出来ない。あの餡子脳どもが、いつ再び人間に楯突いてくるか分からないが・・・ 当面は、人間とゆっくりの関係は、このままだろう。 『こんなの事なら、もっと早く強気に出てりゃあ、にとりとひなは・・・』 先日加工所に行き、実験という名の拷問を受けていた元長のぱちゅりーから、にとりとひな襲撃の理由を聞いた。 どうやら、にとりとひなが住んでいた、川辺の雑草が欲しかったらしい。 事の発端は、ありすの群れで作られている、干草を編んで作られたベッドだ。 流石ありすの群れで作られたベッドは品質が良く、ぱちゅりーの群れは大量にベッドを輸入した。 だが、ありすの群れへの支払いの為の食糧も膨大な量となり、ぱちゅりーは憂慮すべき事態と、 幹部ありすに命じ、独自にベッドの開発を行わせた。 すると最近になって、ベッドの原材料となる干草は、川辺の雑草を干したものが一番良い、と分かった。 そしてその川辺に、希少種ゆっくりが住み着いたという、れいむの報告を思い出し、眉をひそめる。 何だ、ありすの群れとの遅れを取り戻さねばならないこの大事なときに、訳の分からぬ希少種なんぞ・・・。 不愉快に思ったぱちゅりーは譲歩案など出さず、にとりとひなに高圧的に接して話をこじらせ、 挙句の果て群れのまりさが暴行を受けたと聞くと、碌に事件の調査もせずにとり討伐を強行した。 『ふう・・・』 俺は一旦駐車場に戻り、車から紙袋をおろした。 再び山に入り、今度は工事現場ではなく、かつて、にとりとひなの住処だった場所に向かう。 さらさらと小川の流れる音が心地良いそこにあるのは、にとりとひな、そしてその子供達の墓だけだ。 俺は、墓の前にかがみこみ、袋から板切れを取り出した。 板切れにはにとりとひなを模した、木製のアクセサリが括り付けられている。 俺が、ゆっくりショップのアクセサリ売り場で買ってきた物だ。 更に、板切れの開いた部分に、マジックで一文を書き入れた。 『我が盟友、にとりとひなに捧ぐ』 俺は、お手製の墓標を、墓の盛り土の前に置き、更に袋からお菓子を取り出し、墓標の前に備えた。 俺は立ち上がり、墓の前で黙祷する。 (・・・見殺しにしてすまない、にとり) 俺は、目を閉じたまま、にとりとひなの顔を思い浮かべた。 と・・・ (・・・ゆふふふふ・・・めいゆう・・・) (・・・え、何?!) 俺は、声が聞こえたような気がして、あたりを見た。いや、人など居ない、ゆっくりもいない。 誰も居ない。気配すらない。 (・・・みていたよめいゆう・・・ありがとう・・・かたきをうってくれてさ・・・) (何を言ってる。人間は、お前の死を利用して、漁夫の利を得ただけだぞ) (あははははは、めいゆうはばかだな!にとりは、じぶんでしぬときめたんだぞ?) (なにを言って・・・) (にとりのしを、にんげんがりようしてなにがわるい?) (お前はその結果に、満足できるのか・・・?) (けっかだけみたら、めいゆうが、にとりをころしたしかえしをしてくれた。まんぞくさ) そりゃ、ぱちゅりーの群れを駆除する建前が、そうだから・・・。 だけど。 (俺は、お前に生きていて欲しかったよ) (・・・) 何かが遠ざかる。 (めいゆうのかいゆっくりになれなくて、ざんねんだ。さようならめいゆう) (くるくる・・・さようなら) (さようなら、めいゆうさん) (くりゅくりゅ・・・さようにゃらあ・・・) そう、か・・・ 『幸せそうで良かった』 俺は、にとりたちがゆんごくで幸せに暮らせると、何故か確信して、その場を去った。